第66回 全日本総合選手権大会

観戦記 12月7日(金)準々決勝


男子シングルス準々決勝

田児 賢一(NTT東日本) 21-16、21-7 桃田 賢斗(富岡高校)

王者の貫録、危なげない試合運びで再び若き挑戦を退ける

昨年の準々決勝、王者相手に自分のプレーが出来ずに悔しい敗戦を喫した選手がいた。桃田健斗。彼はこの1年、悲願のインターハイタイトルを取り、更には世界ジュニアを制して、昨年と同じ舞台での王者・田児賢一との再戦に挑んだ。
「昨年は最初から相手ペースで全く戦えなかった。今年は最初から飛ばして焦らせたい。」と前日語っていた桃田は第1ゲーム、宣言通りの猛攻に出る。序盤こそ世界で戦い続ける田児の正確なラリーとピンポイントで放ってくる強打に押されたが、徐々にラリーについていくようになり、サウスポー特有の強力なクロススマッシュを決めるなどして逆転に成功し、14-12とする。しかしここで動じないのが田児の絶対王者たる所以だ。田児はラリーをしながらショットの精度を更にあげていき、桃田の打球コースを限定させて強力な決定打に繋げる。苦しくなった桃田はミスも出始め、終盤は有効な攻めもできずに21-16で田児がゲームを先取した。




第2ゲーム、再びペースを掴みたい桃田だったが、集中力を増した田児はどんな球も厳しく返球してラリーの主導権を離さない。「どれだけ打っても打たされている状態だった。」と桃田が語った通り、田児はあらゆるショットを意のままにリターンし、桃田を揺さぶって甘い球を誘い出してはそれを確実に決めていく。桃田は一方的な展開を打破することができず、最後は田児の放ったクロススマッシュがサイドラインを捉え、21-7の快勝で王者の威厳を見せつけた。
試合後の会見で田児は「桃田の世界ジュニア優勝は素晴らしいことだが、大人の大会は違う。彼の成長のためにもしっかり負かせてあげられてよかった。これから共に世界で戦っていく仲間なので、もっともっと成長して脅かしてほしい。」と、桃田に対する厳しくも大きな期待を語った。一方、昨年と同じく準々決勝敗退となった桃田は「昨年と違って第1ゲームは戦えたけど、終わってみれば全然だめ。昨年から成長がなく残念。」と悔しさを表わした。

 

女子シングルス準々決勝

奥原 希望(大宮東高校) 21-14、21-19 高橋 沙也加(パナソニック)

スピード、テクニックに我慢強さも加わり圧勝!

奥原は世界ジュニア選手権女子シングルスで優勝を飾り大会連覇を狙う。一方高橋は11月に行われたスコットランド国際で優勝したが、決勝までの6試合をすべてストレートで勝利する好調を維持している。2人の対戦成績はこれまで2勝1敗と高橋が勝ち越している。
第1ゲームは高橋が落ち着いたプレーで主導権を握り、スマッシュ&ネットなど攻めが冴え8-5とリードする。これに対し奥原は「向かっていく気持ちが最初から出せた。強い声も出ていい感じだと確認できた。」と2回戦で苦しんだ経験をプラスにもっていく対応能力をみせる。追いついては離される苦しい展開でも「攻めるより崩す。相手の十分な体勢で打たせないようにまたタイミングを外すことを心掛けた。」奥原が我慢してチャンスを待つ。12-14とリードされた場面でこのゲームで初めての長いラリーが展開される。ここを技ありのストレートカットでポイントを奪った奥原が流れを引き寄せる。さらに高橋に3本連続してヘアピンミスが出てしまう。「ここで押し切ろうという気持ちに変わった。リードされていたが相手のミスを誘い一気にいくことが出来た。」と奥原が21-14でこのゲームを奪う。

第2ゲーム、スマッシュ力で上回る高橋が攻めるが、奥原のきっちりしたレシーブの前に粘り負けしてミスをしてしまう。奥原は中盤クリアーミスが続いて14-15と逆転されてしまうが、フォア奥からのクロススマッシュ、クロスカットなどで連続5ポイントを奪いあっさり19-15と逆転する。高橋は「後半に一本取らないといけない時に取れなかったのが課題だ。負けていても追い越す、繋いで取ることがテーマだったがミスが出てしまって悔しい。」と20-19と1点差に詰め寄ったものの、最後はこの一本に賭ける気持ちで上回った奥原が21-19のストレートで勝利した。
奥原は「勝ててほっとしている。ナショナルメンバーに入ったこともありベスト4に入ることが絶対だと思っていた。」と素直に喜んだ。明日の準決勝の三谷美菜津 選手(NTT東日本)との対戦については「昨年は勝つことができたが、世界上位に入りスーパーシリーズで優勝している三谷選手に"成長している差は何だろうか""どこまでついていけるのか"いろんな意味で挑戦する気持ちで臨みます。」と話した。

 

男子ダブルス準々決勝

園田 啓悟/嘉村 健士(トナミ運輸) 21-9、17-21、19-21 佐伯 祐行/垰畑 亮太(日本ユニシス)

5度目の正直、強気の攻めで悲願の宿敵撃破!

今後の日本男子ダブルスを担う園田/嘉村と佐伯/垰畑の両者が準々決勝で顔を合わせた。この2組は過去に日本ランキングサーキット2011、2012、カナダオープン、スコットランド国際と4度対戦しており、全て園田/嘉村が勝利している。しかしながら、そのうち3度はファイナルゲームまでもつれており、どちらが勝ってもおかしくない一戦となった。
第1ゲーム、勢いを掴んだのは園田/嘉村。高速ドライブから相手を揺さぶって連続攻撃を仕掛ける。ローテーションを立て直せなかった佐伯/垰畑は得意のトップアンドバックの形を思うようにつくりだせない。結局スピードで勝った園田/嘉村がこのゲームを21-10で奪った。
第2ゲーム、勢いそのままに相手を退けると思われた園田/嘉村だったが、徐々にミスが目立ち始める。一方で佐伯/垰畑は徐々に攻撃のペースを掴んで一進一退の展開となる。佐伯がスピードを上げて球をさばきロブをあげさせると、垰畑が強力なジャンプスマッシュを連発して得点を重ねる。園田/嘉村も気迫のこもったショットで対応し、シーソーゲームのまま得点は17オール。ここで意地を見せたのがこのゲームを落とせない佐伯/垰畑。緊迫した場面にも大胆な攻めを貫き、連続4ポイントをあげて21-17でファイナルに持ち込む。

運命のファイナルゲーム、互いに負けられない両ペアは持ち味を存分に発揮したプレーで点を奪い合う。横方向の速い動きを生かしてスピーディーな攻めをする園田/嘉村と、上がってきた球に対して気持ちを載せて確実に沈めていく佐伯/垰畑。試合の流れは何度も両者を行き来し、19-18と園田/嘉村が1点リードで迎えた大事な局面、ここでも「前でしっかり球を押さえながら、最後まで強気で攻め続けた。」という佐伯/垰畑がトップアンドバックの攻撃で球を沈め、3連続ポイントで21-18と因縁の対決を制した。
対園田/嘉村ペア5戦目にして初めて勝利を掴んだ佐伯/垰畑は試合後、「これまで本当に勝てなかったのでとにかく嬉しい!このまま次の試合も勝ちに行きたい。」と喜びを語ってくれた。

 

女子ダブルス準々決勝

樽野 恵/新玉 美郷(NTT東日本) 14-21、15-21 末綱 聡子/前田 美順(ルネサス)

貫録のプレーで超攻撃的ペアを封じ込める

全日本社会人3位の攻撃的な樽野/新玉と日本ランキング1位、安定したゲームメイクに定評のある末綱/前田が顔を合わせた。

第1ゲーム、末綱/前田らしからぬ簡単なミスに対して丁寧なラリーで樽野/新玉がリードを奪う。しかし、末綱/前田はミスを修正し、徐々に追い上げて前田がスマッシュを決めて、11-10とリードを奪い返す。ここからは長くトップで戦い続ける末綱/前田が前衛での刺し合い、レシーブ、決定力で上回り、最後は末綱がプッシュを決め21-14で奪った。

第2ゲームは1ゲーム目の勢いのまま、末綱/前田が有利に試合を進めていく。樽野/新玉は流れを変えるためにレシーブを丁寧に短くリターンし、新玉が後衛からスマッシュを強打し、長身の樽野が前衛で飛び出して決める攻撃的なパターンで11-12と1点差まで詰め寄る。しかし、反撃もここまで。末綱/前田はレシーブを左右、高低を巧みに織り交ぜ、守りから攻めへと切り替え、樽野/新玉の攻撃的なラリーを断ち切り着実に点数を重ねていく。最後は末綱がスマッシュを決め、21-15で準決勝へと駒を進めた。明日は藤井瑞希/垣岩令佳(ルネサス)との対決となる。
試合後、末綱/前田は「自分たちのプレーができている。同じチームなので思いっきりやりたい。」と意気込みを語った。

女子ダブルス準々決勝

藤井 瑞希/垣岩 令佳(ルネサス) 21-12、21-16 今別府 靖代(ヨネックス)/小池 温子(広島ガス)

勝負を分けた序盤のミスの連鎖

 今大会最注目のペア、ロンドン五輪銀メダルの藤井/垣岩が登場し、会場中の注目を一身に集めました。対するはもはやベテランの域にある今別府/小池。
仮に"格上"の相手に対する時の鉄則があるとすれば、先ずは立ち上がり、試合への入り方が何より肝心と思われます。
ヨネックスの拠点である東京。広島に拠点を置く広島ガス。遠距離ペア故の練習量の不足を、ダブルスのスペシャリストとしての経験と創意によって、克服してきました。けっして国内トップではないものの、印象的な試合を、これまで数多く見せてくれています。しかし、この試合での今別府/小池は、これまでのキャリアには不似合いなものでした。
4本連続のミスショットによって、序盤の主導権を完全に藤井/垣岩に渡してしまったのです。
好調時の藤井/垣岩は極めて攻撃的であり、相手のミスより、自らのショットによって得点を重ねていくプレイスタイル。ところが、この試合での藤井/垣岩は、敢えて言えば、労せずして得点を重ねていきました。

そんなふうに始まった第1ゲームは、女子ダブルスの試合としては異例の、わずか17分という短さで終わりました。
ラリーの応酬が行われるシーンは少なく、どちらかの、今別府/小池のミスによって得点が加算されていくのでした。
そうして進行していく試合には、どこか淡白な印象を持ってしまいます。
瞬間的に繰り出される藤井/垣岩らしい破壊力に満ちたショットも、勢い、印象が薄くなるのでした。結果、12本で藤井/垣岩が第1ゲームを取りました。
ミスの連鎖は第2ゲームに入っていくらか軽減されたものの、試合の流れを根底から覆すには至りません。13-15と中盤まではやや競ったものの、ここから藤井/垣岩は7連続ポイントを重ねます。最後の1本はやや手こずったものの、最終的には16本で試合を終わらせました。
藤井/垣岩の完勝と言ってしまえばそれまでのこと。けれど、ある懸念が浮かんだのでした。
年内いっぱいでのペア解消を公言しているふたり。この全日本総合の一試合一試合がカウントダウンとなっています。もちろん、目指すは有終の美を飾る総合初優勝。
けれど、試合の中で感じたのは、ふたりのペアリングの"綻び"とでも言うべきものでした。何度かフォーメーションが乱れる場面が見受けられたし、集中力を欠くミスも少なくなかった。
今日の試合の展開では、高い集中力を維持し続けるのは難しかったかもしれない。けれどそれを差し引いても、不安材料を露呈したように思います。
明日の準決勝の相手はチームの先輩、末綱聡子/前田美順。ペアの完成度では図抜けています。困難な戦いになるのは間違いない。
この試合に向けて、藤井/垣岩はどこまで修整できるか? 勝敗を分ける大きな要因のひとつになると思われます。

混合ダブルス準々決勝

黒瀬 尊敏(トナミ運輸)/横山 めぐみ(ルネサス) 13-21、16-21 佐藤 翔治/西山 夕美子(NTT東日本)

流れを引き寄せたのは冷静な戦術、本物の勢いで準決勝へ

昨年度3位の黒瀬/横山と組み始めたばかりながら全日本社会人準優勝の佐藤/西山が対戦した。
第1ゲーム序盤はお互いに点を取り合い、12-12と拮抗するが、「ドライブ系で打ち合いすぎた。緩急をつけることを意識した。」と佐藤/西山が振り返ったように巧みに攻撃の形を作っていく。佐藤が後衛からのスマッシュで崩して西山が前でプッシュを決めるセオリー通りの攻めで得点を重ねていく。最後は横山のプッシュがアウトになり、21-13で佐藤/西山が奪う。結局は黒瀬/横山に反撃の隙も与えず、9連続ポイントだった。

勢いそのままに第2ゲーム、佐藤/西山が7連続ポイントで流れを完全に掴む。「前に返ってくるように佐藤選手が打ってくれたので、ネット前で決めることができた。」と西山が振り返ったように面白いように西山のもとにシャトルが集まってくる。黒瀬/横山も粘りのレシーブから攻めのパターンに持ち込んで決めていくが、佐藤/西山の勢いを押し返すことができない。結局は21-16で佐藤/西山が準決勝進出を果たした。
明日は同じチーム対決を制した垰畑亮太/髙橋礼華(日本ユニシス)と対戦する。