観戦記 12月28日(水)準々決勝

男子シングルス

桃田賢斗
(NTT東日本)
2 21-18
21-11
0 大林拓真
(トナミ運輸)

本大会4度の優勝を誇る桃田賢斗が全日本社会人優勝の大林拓真と対戦した。ワールドツアーを回避して調整し、ここまで安定した戦いをしてきた桃田に、2回戦でA代表の渡邉航貴(BIPROGY)をストレートで下した大林がどこまで通用するか注目の一戦となった。

第1ゲーム、「全日本総合は国内で一番大きい試合で、しっかり調整して調子を上げてきた。」という大林が6-2と先行する。勢いに乗るかと思われたが、そこは桃田のゲーム巧者が光る。ネット前に誘い込んでプッシュを連続で決めるなどして得点を重ねていく。追いかける展開となった大林は17-15と2点差に詰め寄るも、攻め急いでプッシュをネットにかけてしまい勢いに乗れない。最後は桃田が大林のショットを読んでプッシュを連続で決めて21-18とする。

第2ゲーム、「ストロークがうまい世界一の選手、攻撃ができなくなったというよりは迷ってしまった。なにを打ってもリターンされてしまった。」と大林の言うように、桃田がスタートから圧巻のラリー、ゲームメイクで11連続ポイントを奪い、完全に主導権を握る。強打が武器の大林は速い展開で攻めるも丁寧にレシーブされ、ゆったりとした桃田のペースでラリーが展開され、流れは変わらない。結局は21-11で桃田が準決勝進出を果たした。

盤石の勝利となった桃田は、準決勝で同じチームの田中湧士と対戦する。「手の内を知り尽くしている相手なので長いラリーにある。攻撃力のある選手なので、弱気になってしまう場面もあると思うが、相手のコートに多く返して有利に試合を進めたい。」と話した。

一方、悔しい準々決勝敗退となった大林は、「A代表と練習、試合の機会は少ない中で桃田選手と試合をしたが、自分はまだまだと実感した。」とさらなるレベルアップを誓った。

田中湧士
(NTT東日本)
2 23-25
21-11
21-14
1 秦野陸
(トナミ運輸)

昨年優勝の田中湧士と、2回戦ではチームの先輩の常山幹太をファイナルゲームで下してステップアップのベスト8入りを果たした秦野陸が対戦した。

第1ゲーム、「飛ばないコートだったので、早いタッチを意識した」という秦野がスマッシュを沈めていく。一方の田中が相手のフォアサイドへのスマッシュをエースショットとして対抗する。終盤まで1点を争う好ゲームとなり、先に田中が20-19とゲームポイントを握るが、粘りのラリーでミスを誘い、スピードを上げた秦野がクロスネットでエースを奪って25-23とする。

第2ゲーム、この流れのまま行きたい秦野だったが、「気持ちと体がマッチしなかった」とリズムに乗れない。田中が攻め立てて11-2、14-3、19-8としてワンサイドゲームとなる。

ファイナルゲームも田中が優位に試合を進めていく。11-5から田中がネット前でのミスなどで5連続得点を計上してしまうが、「我慢しきれなかった」という秦野のミスにも助けられ、田中が21-14で準決勝進出を果たした。接戦をものにした田中は、「当たり前のことだが、”負けたくない”という気持ちをずっと持ってきた。小さい頃に成績を残せず悔しい思いをたくさんしてきたので、他の選手よりも負けたくないという気持ちは強いと思う。」と勝利への執念を話し、明日に向けては、「しっかり準備して力を出し切るだけ」と語った。

一方の秦野は、「昨日チームの先輩を倒した分、今日はチームを背負う気持ちで、先輩の分も勝っていかないといけない中で負けてしまったことは個人的にも悔しいし、チームとしてもとても悔しい。」と話した。

女子シングルス

髙橋明日香
(ヨネックス)
2 21-18
21-13
0 栗原あかり
(筑波大学)

A代表の髙橋明日香が全日本学生準優勝の栗原あかりの挑戦を受けた。実績的には、髙橋が上であるものの、2回戦では池内萌絵(七十七銀行)にファイナルゲームと苦戦したのに対し、栗原はB代表の川上紗恵奈(北都銀行)を下し勢いがあるので、好ゲームが予想された。

第1ゲーム、「昨日の2回戦は全然ダメだった。急に緊張して足も動かなくなってしまった。とにかく足を動かして、リラックスしてやろう。」と振り返った髙橋はスタートからコートを縦横無尽に動き回り、切れ味鋭いスマッシュ、スライスショットに加え、ネット際に落ちるドロップで11-4、16-5と栗原を圧倒する。栗原は喰らいつくも勢いに乗った髙橋を止める術なく、21-8で髙橋が先取する。

第2ゲームは、髙橋のショットが安定せずアウトが目立ち、栗原の得意とするラリー展開になり、苦しい立ち上がりで5-11とインターバルを迎える。「身長の高い選手に苦手意識がある」という栗原は、ここまでうまく試合を進めてきたが、攻め急いだのか5連続でミスをしてしまう。一方の髙橋は、「いつもなら焦ってしまうところだが、昨日の試合があったので、焦らずチャンスはある、やることに集中する」と、気持ちを切り替え一気に盛り返し、さらに5連続ポイントを奪い、15-12と逆転すればさらにショットは切れ味を増していく。終わってみれば21-13と髙橋が強さを見せつけた試合となった。

明日は山口茜(再春館製薬所)との対戦となる。「強い相手なので、チャレンジするだけではなく、自分を出し切りたい。そうすれば結果はついてくる。」と髙橋は語ってくれた。

男子ダブルス

井上拓斗/三橋健也
(BIPLOGY)
2 23-21
21-13
0 高野将斗/玉手勝輝
(日立情報通信エンジニアリング)

準々決勝で前回大会決勝のカードが揃った。

第1ゲーム、B代表同士で手の内を知る両ペアは序盤から低空戦での応酬で、お互い一歩も譲らないシーソーゲームを繰り広げる。井上/三橋は三橋が後衛で強打を放ち、前衛で井上がゲームメイクをする形を積極的に作り、ディフェンスでは落ち着いたレシーブで相手を左右に揺さぶってチャンスを伺っていった。一方、高野/玉手はドライブの低空線と大きな球回しとの使い分けて確実にチャンスを見極め、着実に点数を重ねた。

しかし、このゲーム、最後にチャンスを掴んだのは井上/三橋だった。三橋が打ち込んだストレートスマッシュをライン上は突き刺さり、23-21までもつれたゲームを井上/三橋が手にした。

第2ゲームも両者譲らない展開で始まる。だが、ここで一歩前に出たのは第1ゲームを先取していた井上/三橋だった。井上自身も試合後「1ゲーム取っていたので、気持ちにも余裕があって綺麗に球出しができていた。」と振り返ったように、安定したレシーブで相手の攻撃をしのいで、自分たちの力でチャンスを作っていった。一方、高野/玉手は常に食らいつき、大きく点差を開かれることなく進めるも、逆にリードできる展開を作れず、苦戦した。ただ、先に11点を取り、一気に抜け出したい井上/三橋だったが、配球がやや甘くなり、すかさず高野/玉手が4連続得点を奪って追撃する。それでも、井上/三橋は立て直しに成功し、自分たちのペースへと試合を戻した。そして、このゲーム大きなポイントとなったのが17-13の場面。互いの意地がぶつかった長いラリー戦を井上/三橋が制し、一気に流れをものにした。そこからは相手を寄せ付けず、逃げ切った井上/三橋が第2ゲームを21-13で昨年のリベンジを果たした。

試合後、三橋は「第1ゲームは力が入っていて決め急いでしまっていた。第2ゲームからはそれを修正できたことで、力みが取れて、2人でいいプレーができたと思う。決めに行けば、その分リスクがあるので、もう少しリスクがない球を取り入れたのが勝因だと思う。」と振り返った。また、運決勝で竹内/松居(日立情報通信エンジニアリング)と対戦することに対して、井上は「負けたことしかないので、勝てたらいいなと思っている。」。三橋は「どれだけ自分の仕事ができて、我慢できるかという勝負になるかと思うので、明日に向けて体も気持ちも整えたい。」と語った。今日の仕上がりが良さを明日にもつなげ、準決勝での益々の活躍に期待したい。

女子ダブルス

櫻本絢子/宮浦玲奈
(ヨネックス)
2 21-17
21-15
0 中西貴映/岩永鈴
(BIPLOGY)

全日本社会人選手権を優勝した櫻本/宮浦は格上の中西/岩永と対戦した。

第1ゲーム、流れを先に掴んだのは櫻本/宮浦だった。序盤より宮浦が後衛から連続スマッシュで攻め込み、ゲームの主導権を握った。前日の試合で宮浦は「自分の後衛でのプレーが良くなかった」と振り返っており、今日の試合では心がけていたからか、自分からミスをすることなく、しっかり我慢をして攻撃を重ねた。一方、中西/岩永は自分たちのペースを作ろうと、レシーブから相手を崩すことを試みるも、櫻本/宮浦のレシーブも硬く、最後は櫻本/宮浦が押し切って第1ゲームを21-17で先取した。

第2ゲーム、中西/岩永はレシーブをドライブなどの低いショットで押し返す形で相手の連続攻撃をしのぐと同時に縦の形を積極的に多く作り、相手コートにシャトルを沈めていく。しかし、櫻本/宮浦は落ち着いたプレーで中西/岩永の攻めに対応した。また、第1ゲームでは宮浦が後衛として攻める場面が多かったが、この第2ゲームは本来の形である櫻本が後衛でドロップやカットなども取り入れて、宮浦が前衛で仕留める形を作って第1ゲームとはテンポ感の違うゲームメイクで試合を運んだ。試合の主導権をスタートから掴んだ櫻本/宮浦は最後までそれを手放さず、第2ゲームを21-15で終え、準決勝へと駒を進めた。

「今日が山場だと思って練習してきたので、自分たちの良い形で勝ち切れたことが自信になった。」と櫻本は今日の試合を振り返った。また、宮浦は明日に向けて「自分たちの目標はベスト8以上だったので、それはまず達成できたが、最終的な目標は優勝なので、決勝までは見すぎず、次の試合の相手は根気強くて粘り強い印象なので自分たちも球を追い続けて頑張りたい。」と語った。

福島由紀/廣田彩花
(丸杉)
2 21-11
21-8
0 保原彩夏
(ヨネックス)/
鈴木陽向
(NTT東日本)

今年3月の全英オープンでケガから復帰した福島由紀/廣田彩花と、新しいペアリングで臨んだ保原彩夏/鈴木陽向が対戦した。保原の左からの強打をアタックの軸としているため、鈴木が前衛でチャンスを作るかが鍵となる。

第1ゲーム、お互いに点を取り合うも、「出だしは悪くなかったが、決まらない時や苦しい時に簡単にミスしてしまった。自分たちの攻めの形が作れず、力を出し切れなかった。」と保原が振り返ったように、福島/廣田が堅いレシーブからのゲームメイクで8連続ポイントで12-7として、主導権を握る。「シャトルの感覚が合ってきた。自分たちのいいところが出てきている(廣田)」と福島/廣田が21-11で危なげない展開で奪う。

第2ゲームも福島/廣田が主導権を握る。長いラリーで保原/鈴木のスピードが落ちる一方、ギアを上げ、ショットの切れ味が増す福島/廣田。5連続、8連続でポイントを奪い、21-8と圧巻の試合運びで準決勝へ駒を進めた。

試合後は、「これまではスピードを上げての攻めが有効だったが、回されたり、相手のペースになってから変えられなかった。(これまで)パートナーの櫻本絢子(ヨネックス)に頼っていた。海外の試合でも決勝まで行って勝ち切れないことが多かった。個々の能力を高める必要がある。」と鈴木が話せば、「普段A代表とやる機会はない。決まらないとは思っていたが、予想外の球や攻めさせてもらえない球が多く、レベルの差を感じた。」と保原。この経験を活かして、一回りも二回りも成長してもらいたい。

混合ダブルス

緑川大輝
(早稲田大学)/
齋藤夏
(ACT SAIKYO)
2 15-21
21-12
21-12
1 三橋健也/中西貴映
(BIPLOGY)

連覇を目指す緑川/齋藤は予選から上がってきた三橋/中西と対戦した。

第1ゲーム、序盤からロングサービスで相手の意表をついた三橋/中西がスタートダッシュを切り、連続5得点を先取する。相手に先手を握られた緑川/齋藤はうまく自分たちの形が作れず、思うように試合の流れを掴むことができなかった。一方、三橋/中西は中西が積極的に前衛に入ってプレッシャーをかけ、三橋が気迫溢れるプレーで後衛から攻めて一気に流れを掴むとそのままこのゲームは21-15と逃げ切った。

第2ゲーム、コートエンドが変わったと共に緑川/齋藤のプレーも変わる。7-4でリードしていた緑川/齋藤はそこから7連続得点で一気に抜け出す。齋藤がネット前でプッシュ、ハーフ球、ドロップ球を巧みに使い分けて、シャトルを沈めると着実に点数を重ねていった。本来のコンビネーションプレーを取り戻した緑川/齋藤に対し、三橋/中西はラリー戦に持ち込んで粘りを見せるも、ミックスでの経験が勝る緑川/齋藤が落ち着いた試合運びで第2ゲームを21-12で取り返した。

ファイナルゲーム、三橋/中西は切り替えて序盤から積極的に攻めの姿勢を見せて食らいつく。ただ、第2ゲーム目からミスらずにキープしていくことを心がけたという緑川/齋藤は長いラリーに持ち込まれてもしっかりそのラリー戦を制し、これ以上相手に勢い着かせなかった。緑川/齋藤はファイナルゲーム序盤、相手に少々点数を許すも、インターバルを11-9とリードした状態で折り返した。そして、インターバル開け、一段とギアを上げた緑川/齋藤はお互いの次々と攻撃を決め、気付けば9連続得点で18-9と一気に差を広げた。本来のプレーを取り戻した緑川/斎藤は最後21-12でファイナルゲームを締め括ると、また連覇へと一歩近づいた。

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