観戦記 12月30日(木)準決勝

男子シングルス

桃田賢斗
(NTT東日本)
2 17-21
21-16
21-17
1 田中湧士
(NTT東日本)

桃田の攻めが光る。心身ともに万全な状態で明日の決勝へ。

これまで4度、総合の優勝経験がある桃田賢斗が、昨年の総合覇者の田中湧士と顔を合わせた。同じ所属の後輩である田中に対して桃田は、「手の内を知り尽くしている相手なので長いラリーになる。攻撃力のある選手なので、弱気になってしまう場面もあると思うが、相手のコートに多く返して有利に試合を進めていきたい」と話していた。

第1ゲーム、桃田が高さ、速さ、正確さ全てが1級品のロブと固いレシーブを軸に相手を揺さぶるも、「普段の田中なら崩れるところが、崩れてくれない」とミスを重ねてしまう。また、ラウンドからのスマッシュ、カットに迷いが見え、精彩を欠く。逆に田中の持ち前のスピードを活かした速いタッチ、スマッシュを決められ、6連続得点を奪われるなど一度もリードを奪うことができないまま、17-21で奪われる。

第2ゲーム、固さが取れ、ショットを修正した桃田が試合を有利に進めていく。13-11の桃田のプッシュから、パズルのピースが揃ったかのように桃田が攻撃的なプレースタイルに転換する。フォアサイドからのクロススマッシュを3本決めるが、田中は全く反応できない。17-13の場面では、桃田のスマッシュのインの判定に対して、田中のチャレンジは「判定不能」と5分ほど試合が中断するアクシデントが発生したが、集中力を切らさなかった桃田が21-16で奪う。

ファイナルゲーム、田中がさらにスピードを上げるが、それを上回るスピードで桃田が対抗し、桃田がスマッシュアンドネットなどで5-1と抜け出す。攻撃力だけでなく、田中のネット前からのプッシュを返す守備力も光り、17-9とする。「フェイントで体力を削られ足が動かなかったものの、勝つためにスマッシュを連打した。」と、田中が執念のスマッシュアンドネットを決めるなど3点差に迫るも、先輩の意地を見せた桃田が21-17で決勝進出を決めた。

試合後、田中は「桃田さんが相手との駆け引きで試合をするのに対して、自分はまだその域まで達しておらず、独りよがりなプレーとなってしまった。大きな差を感じている。どんなに汚いバドミントンでも、一球も落とさないくらいの気持ちで、結果を出せるようになりたい。」と、貪欲に成長し勝ちを求めていく覚悟を語った。一方の桃田は、「1ゲーム目は負けていて非常に苦しかったが、我慢しようとプレーできたのが良かった。ラスト1試合、自分の全てを出し切れるように、強い気持ちでプレーしたい。」と話し、5度目の優勝に向けて心身ともに準備万端な様子が伺えた。

西本拳太
(ジェイテクト)
2 21-13
21-15
0 村本竜馬
(ジェイテクト)

自在のショットで大躍進のダークホースを抑え込んだ西本、2度目の頂への挑戦権を得る。

今年、ダイハツヨネックスジャパンオープンを制しワールドツアー初制覇を遂げ、「これからが全盛期」と語っていた西本拳太が、接戦をものにしながらも順当に準決勝に登場。対戦するのは、今大会のダークホースとなった同僚の村本竜馬。村本は単複共に予選からこの総合を戦っており、この試合で計10試合目となる。

第1ゲーム、コートを広く使ったラリー展開からスピードを上げて先行したのは西本。好機で打ち込んでくる村本のショットを正確に返球し、逆に上げさせた場面からは美しいストロークを活かし、相手の虚をつくドロップを有効に使って、相手を崩しては得点につなげていく。5-5から6連続得点をあげて主導権を掴む。後半、村本もクロスへの好ショットを連発して西本を大きく揺さぶるが、西本のフィジカルは安定していた。最後は激しいラリーで西本のドロップが決まり21-13。村本は両ひざをコートについた。

第2ゲーム、またしても出だしから西本が快調に飛ばす。このゲームでは高いポジションで捌くネットプレーが冴えを見せ、村本はロブをあげることにも苦労する場面が多くなる。西本が10連続得点を奪い、12-2と突き放す。しかし村本の闘志はまだ尽きていなかった。テンポよく多彩な攻撃を仕掛けてくる西本に対し、村本は幾度となく飛びつく必死のリターンで粘りを見せ、追いかける。観客はそんな村本の姿に心打たれ、激しいラリーが展開されたり、村本が点を奪うごとに拍手は大きくなっていく。底力を見せて15-20まで追い上げた村本であったが、連戦の疲労に加え、西本が仕掛けた正確無比なラリーと数々のディセプションショットにより体は限界に達していた。西本が村本のプッシュをカウンターレシーブし、21-15で決勝進出を決めた。勝利した西本は大健闘の後輩を笑顔で称え、村本は観客席全方向、および熱戦を繰り広げたコートに深くお辞儀をし、最後まで見守った観客の拍手喝采を浴びてこの全日本総合を終えた。

明日の決勝戦で。2016年以来2度目の優勝をかけて盟友・桃田賢斗(NTT東日本)と戦うこととなる西本は、「明日勝つために何をしていくかを準備して臨みたい。この大会は始まったときから優勝しか狙っていない。」と力強く語った。

一方、大会を通して高い実力を示した村本は「結果は素直に嬉しい。」と充実の表情を見せながらも「しぶとく拾って耐えて戦ってこられたけど、強いて言うなら今日もっと粘りたかった。将来的には代表に入って国際大会を回りたい。ダブルスよりもシングルスで活躍したい。」と野望を語り、更なる活躍、飛躍を予感させてくれた。

女子シングルス

山口茜
(再春館製薬所)
2 21-19
21-17
0 髙橋明日香
(ヨネックス)

万全の出来でなくとも勝ち切る。山口が2022ナンバーワンプレーヤーたる所以を証明し、日本一奪還に王手。

今年、全英制覇、世界選手権2連覇達成、ワールドツアーファイナルズ優勝とビッグタイトルを総なめし、世界ランキング1位にして世界バドミントン連盟の年間最優秀選手の称号も得た山口茜。観客の期待を一身に集めて2年ぶりの全日本総合に臨んでいる。準決勝で対戦するのは、同じA代表として活動し、全日本社会人を制した髙橋明日香。総合の準決勝にふさわしい顔合わせとなった。

第1ゲーム、山口はスピーディーで正確な球回しで相手を翻弄し、幸先よく6連続得点を奪う。その後もリアコートからの打ち分けが冴え、クロススマッシュ、クロスドロップでエースを奪うなどして16-8と優位に進めていく。対する髙橋は、「点差をつけられてしまったことで割り切ってプレーできた。」と言うとおり、本来の動きを見せて徐々にラリーに対応して、盛り返していく。特にしっかりと身体を入れて放つショットは威力キレともに優れ、次々に得点につなげていく。しかし、序盤の差は詰め切れず、山口が21-19で逃げ切った。

第2ゲーム、山口は「また自分でしっかりラリーを作っていくという気持ちで入った」と振り返ったとおり、先行して優位にゲームを進める。コートを大きく駆け回りながらも、決して体勢を崩すことなく正確なショットを打ち分ける様は世界女王の貫録だろう。そんな山口に対して、髙橋も前後の動き鋭く、スマッシュ、プッシュを沈めて追いすがり、12-13と拮抗する。後半「疲労がたまっていたこともあって、楽に点を取ろうとしすぎてしまった」という山口だが、そこは勝ち方を熟知した試合巧者、要所のポイントは落とすことなく、リードを保って進めていく。最後は魅せるディセプションのリターンショットで髙橋の逆を突き、21-17として期待に応える勝利を挙げた。状態が万全でなくても、終わってみれば第2ゲームの1点目以外はリードを許すことがなかった山口。現・世界最強プレーヤーとしての風格を見せた。

山口は最高の2022年を締めくくるべく、明日の決勝戦で4度目の全日本総合制覇に向けて邁進する。

大堀彩
(トナミ運輸)
2 21-13
21-11
0 仁平菜月
(トナミ運輸)

「自分のプレーをするだけ」。地に足をつけた大堀、3年ぶりの決勝進出。

A代表で2019年以来の決勝進出を目指す大堀彩が、同じチームの後輩でB代表の仁平菜月と対戦した。「お互い一番知り尽くしている間柄」という2人だけに、強気なプレーができるかが鍵になると予想された。

第1ゲーム、大堀は角度のあるスマッシュとカットのエースショットで仕留めれば、仁平は四隅を丁寧に突きながら相手のミスを待つ。前半の13点までは接戦になるが、ギアを上げ、速いタッチで相手を四隅に動かし、特にドリブンクリアとアタックロブを有効打にしてラリーを支配した大堀が9連続得点で21-13とし、このゲームを奪う。

第2ゲーム、仁平はスピードを上げて流れを変えようとするも、大堀がそれを上回る。同じフォームから放たれる、狙い澄ましたストレートスマッシュとクロスカットを有効打に5連続得点で11-3と優位に進める。「大きいプレーをされても、自分から崩れないように意識して試合に臨んだ」と振り返った大堀には、迷いなく強い気持ちで攻撃を続けていく。最後はスマッシュで相手のミスを誘い、21-11で3年ぶりの決勝進出を決めた。

試合後、大堀は「1試合1試合の気持ちでやってきたが、ついに決勝の舞台に立つことができた。挑戦者の気持ちで、悔いが残らないように自分自身のプレーをするだけ。」と、全試合ストレート勝ちしても地に足をつけ、虎視眈々と総合初優勝を狙う。

男子ダブルス

保木卓朗/小林優吾
(トナミ運輸)
2 21-15
28-26
0 山下恭平
(NTT東日本)/
緑川大輝
(早稲田大学)

手に汗握る緊迫の展開を制した保木/小林は悲願の優勝に向けて接戦をものにする。

世界ランキング2位と日本男子ダブルスを牽引する27歳の保木卓朗/小林優吾とともに混合ダブルスを主戦場としている山下恭平/緑川大輝が決勝への切符を争った。山下/緑川は、準々決勝でA代表の古賀輝/齋藤太一(NTT東日本)に対して、若さの勢いだけでなく、冷静なゲームメイクで強さを見せ、次世代としての期待が高まる。

第1ゲーム序盤から、前衛での駆け引き、ドライブの低く速い緊張感ある展開の連続となる。格上の相手にひるむことなく、緑川のセンスが光る前衛での飛び出しや山下の小気味よいジャンピングスマッシュなど伸び伸びとしたプレーを見せる。9-9から保木/小林がスピードを一気に上げ、小林の後衛からのスマッシュで崩して、保木が前衛で決める得意のパターンで決めて16-9とする。ここまでの互角のラリーから一転、保木/小林が上から強打を沈める展開になる。山下/緑川はなんとか打開しようとするも、ひっくり返すことはできず、21-15で保木/小林が奪う。

第2ゲーム、我慢して攻めの形を作った山下/緑川が9-3と先行する。追う展開の中、小林がフォアからこの嫌な流れを断ち切るような強烈なストレートスマッシュを叩き込む。「苦しい展開になったが、無理せずに入れることを心掛けた。(保木)」という保木/小林は、少しずつ攻撃の形を作れるようになって追い上げる。一発では決まらない中、次をどれだけ早くタッチ、強打できるかが鍵となる中、コート内を動き回る山下/緑川は攻撃の手を緩めず、先にゲームポイントを握る。しかし、ここから「こういう場面は経験してきた。思い描くサーブ周り、いいパフォーマンスだった(小林)」と世界トッププレーヤーの保木/小林が本領を発揮する。小林のクロススマッシュ、山下のプッシュミスで20-20として、延長ゲームに持ち込む。山下/緑川リードで進むが、「決め急がず我慢できた。相手のミスを待ち、気を引き締めた(保木)」に対して、「プレッシャーをかけられて、意識しすぎた(山下)」と25-24で保木/小林がリードを奪う。最後は小林がフォアからのストレートスマッシュをライン際に沈めて28-26とする。レベルの高いラリー、手に汗握る緊迫の展開と非常に見ごたえのある試合だった。

試合後、「何度もこの舞台で戦いっているが、あと一つ勝ち切れていない。チャレンジャーとしてやりたい。(保木)」、「今日の調子でやれれば優勝できると思う。自分たちのプレーを楽しんでいきたい。(小林」と力強く語ってくれた。

竹内義憲/松居圭一郎
(日立情報通信エンジニアリング)
2 21-16
21-16
0 井上拓斗/三橋健也
(BIPROGY)

国際大会の経験は伊達じゃない。A代表でスキルアップした竹内/松居が熱戦を制して初の決勝進出を決める。

初のA代表選出により、この1年の国際大会で腕を磨いてきた竹内義憲/松居圭一郎が、昨年の総合ファイナリストにして今年の社会人王者である井上拓斗/三橋健也と対戦。

第1ゲーム、序盤から激しいラリーが展開され、観客は固唾を飲んで見守る。積極的に強力なスマッシュを打ち込みトップアンドバックで正統な攻めを見せる井上/三橋に対し、竹内/松居はディフェンスから松居が素早い飛び出しによりドライブで切り込み、竹内がコースにスマッシュを決めるカウンター攻撃を武器に、ハイレベルなラリーで互いに点を取り合っていく。13-13の場面、ひと際高い集中を見せた竹内/松居は、好判断と素晴らしい足運びでフロント、およびミドルコートの攻防を制して4連続得点を奪い抜け出す。この優位を保ち、最後は竹内のスマッシュがネットに絡んで相手コートに落ち、竹内/松居が21-16でゲーム奪取に成功する。

第2ゲームに入り、序盤は井上、三橋が立て続けに強打をコースに沈めて5連続得点を奪うなど好スタートを切ったが、竹内/松居は決して引くことなく持てるプレーを堅実に行っていく。中盤までは前ゲーム同様に流れが行き来する接戦であったが、後半にその流れを引き寄せたのはまたしても竹内/松居だった。激しいラリーでも互いに声を掛け合って、打ち勝っていく。特に鋭く前衛に入って相手の攻撃を抑え込み、攻勢を作る松居は、シャトルが後方に飛ぶたびに、後衛の竹内に「頑張って!」と声をあげる。竹内もその声に呼応し、高低と左右をうまく組み合わせたコース取りで次々にスマッシュを決めていき、13-15の場面から6連続得点を奪うなどリードを掴む。最後も井上の強力なスマッシュを松居が前で止め、そのままプッシュを沈めて21-16。初の決勝戦進出を決めたその瞬間、竹内は両ひざをコートについて喜びを表した。

明日の決勝戦(対 保木/小林ペア)に向けては、「全てが高いレベルで揃っている相手。コンビネーションの面で穴がないので、それをこじ開けていきたい(松居)」「相手の個々のレベルの高さがあるのはもちろんだが、自分たちも組んで6年やってきているので、負けないようにしっかり勝負していきたい(竹内)」と語り、プレースタイル同様に正面からぶつかっていく姿勢を示した。

女子ダブルス

櫻本絢子/宮浦玲奈
(ヨネックス)
2 21-15
21-15
0 矢﨑月子/髙崎夏実
(山陰合同銀行)

お互いに高め合ってきた櫻本/宮浦が強い気持ちで打ち切って決勝進出。

A代表入りを狙う櫻本絢子/宮浦玲奈と初めてこの舞台まできた矢﨑月子/髙崎夏実が初対戦した。昨日の準決勝、櫻本/宮浦はA代表の中西貴映/岩永鈴(BIPROGY)を堅いレシーブと強打で粉砕し勢いに乗っている。一方の矢﨑/髙崎は、永原和可那/松本麻佑(北都銀行)の棄権(永原の右アキレス腱痛)によって勝ち上がってきた。

第1ゲーム、「攻撃も守りも凄くて打ち切るペア、ラリーに持ち込もう」という作戦で臨んだ矢﨑/髙崎に、出だし、前衛の宮浦を後衛に下げられて2-6とされも、しっかり対応した櫻本/宮浦が素早いローテーションからの連続攻撃で連続6ポイントを奪い9-6として主導権を握る。櫻本が前後左右に自在のレシーブで崩してスマッシュを決めるパターンで21-15と危なげない展開で櫻本/宮浦が奪う。

第2ゲーム、1ゲームに引き続き、いい流れで櫻本/宮浦がリードしていく。しかし、「シャトルへの執念が強いペアで、連続して打てるペア。」と櫻本が評したように、ここから矢﨑/髙崎が意地を見せる。スマッシュを左右に大きくレシーブしてからドライブで攻めに転じ、スマッシュの連打で4ポイントを奪い、8-7と簡単には主導権を渡さない。お互いに点を取り合うも、「中盤ミスしてしまって、攻撃される形になってしったが、凌げたので、勢いに乗れた」という櫻本/宮浦は、終盤スピードを上げて得意とするアタック力で矢﨑/髙崎のディフェンスを打ち破る。連続5ポイントを奪い、21-16とした櫻本/宮浦が1つ目の目標である決勝進出を決めた。

試合後、「今年1年A代表に入りたいという気持ちでやってきた。今大会も決勝進出、優勝を目標にやってきて、ここまでこられたのはうれしい。」と宮浦が話せば、「自分たちのいい形を出して優勝したい。」と櫻本が意気込みを語った。

一方、初の準決勝進出を果たした矢﨑/髙崎は、「S/Jリーグに向けてペアを変えたりやってきた。今後どういうペアリングになるかわからない。この結果に見合った力を持っていないので、それぞれが高めていく必要がある。」とさらなるレベルアップを誓った。

福島由紀/廣田彩花
(丸杉)
2 21-17
21-13
0 大竹望月/髙橋美優
(BIPROGY)

福島/廣田が A代表の実力を発揮、貫禄のゲームメイクで若手ペアを退ける。

福島由紀/廣田彩花が、20歳と成長著しい大竹望月/髙橋美優と顔を合わせた。大竹/髙橋は昨年の準々決勝と同じカードで小野菜保/福本真恵七(再春館製薬所)へリベンジし、初の準決勝進出を果たした。世界トップクラスの福島/廣田に対してどこまで通用するか注目が集まった。

1ゲーム目、安定のレシーブとゲームメイクで福島/廣田が4連続、3連続ポイントで12-7とリードを奪う。「身長もあり、左と右で攻撃が強いペア。対応が遅れてしまった。」と廣田が振り返ったように、後半攻撃がかみ合ってきた大竹/髙橋が、後衛で長身で左利きの髙橋の強打、前衛で素早い反応の大竹がプッシュを決めるなど3連続ポイントで盛り返す。しかし、髙橋の「決められる数よりも自分たちのミスが多かった。A代表はミスがないのが当たり前」と言うとおり、ミスが少ない福島/廣田が着実に得点を重ね21-17で奪う。

2ゲーム目序盤、安定したレシーブを軸に試合を組み立てた福島/廣田が7連続ポイントで13-5と抜け出す。その後、「ミスが多かったのが反省点」と福島が振り返ったように、バックアウトをするなどショットの精彩を欠く場面もあり5連続失点などで14-11とされるが、しっかり修正した福島/廣田は着実に得点を重ねていく。終わってみれば、この試合一度もリードを与えることなく、福島/廣田が21-13と力の差を見せつけた。

試合後、4度目の優勝を目指す福島/廣田は、「決勝の舞台を楽しみたい(福島)」と気負いのない様子で語った。

一方、準決勝敗退となった大竹/髙橋は「ランキングサーキット優勝、全日本社会人準優勝と国内で成績を残せた。この大会も優勝したかったが、結果はベスト4。この準決勝は0-2だったが、ここまでいい試合はできた。(大竹)」、「結果に満足はしていないが、戦えるところまで来た。課題もはっきりしたので、引き続き挑戦者の気持ちで頑張りたい。(髙橋)」と話し、この1年を総括した。確かな手ごたえを感じた20歳のペアのさらなる成長を期待したい。

混合ダブルス

金子祐樹/松友美佐紀
(BIPROGY)
2 21-13
21-13
0 西大輝/佐藤灯
(龍谷大学)

実力を見せつけた金子/松友が初優勝へ王手をかける。

今大会、順当に勝ち上がってきている金子/松友と、今年8月の全日本学生ミックスダブルスで初めて組むも抜群のコンビネーションで上位ペアをことごとく倒してきた大学生ペアの西/佐藤が準決勝で顔を合わせた。

第1ゲーム、初対戦ならではの探り合いもあって、序盤はあまりお互いのペースが上がらない両者だったが、7-6の場面で金子/松友が長いラリーを制したことをきっかけに少しずつ試合が動き出す。西、佐藤が右左ペアである金子/松友を左右に揺さぶり、崩そうと試みる一方、金子/松本は冷静に対応し、自分たちの攻めるタイミングを見極めて詰めていく。そして、9-7の場面、金子が意表をつくロングサーブで連続得点を得ると、一気に流れを引き寄せて11-7で折り返す。インターバル明け、松友はペースを上げて、積極的に前衛でシャトルに触れて相手にプレッシャーをかける。また、金子もい速度、角度共に申し分ない厳しいショットで相手を追い込むと、金子/松友はそこから連続8得点を奪取した。しっかり試合の流れを掴んだ金子/松本は、懸命に食らいつく西/佐藤を寄せ付けず、21-13で先取した。

第2ゲーム、経験で勝る金子/松友は、プレーの引き出しの多さを見せつける。試合を作ることで精一杯の大学生ペアに対し、松友が前衛での柔らかいタッチを取り入れるなどして相手のタイミングを崩し、金子は積極的にスマッシュを打ち抜いていく息のあったコンビネーションで試合展開をコントロールした。試合後、金子は「イメージしていたよりサービス周りで点数が取れたのがよかった」と振り返ったように、相手に連続得点を取られそうになる場面でも、落ち着いたサービス周りでシャットアウトに成功した。常に主導権を握った金子/松友がこのゲームも21-13で抑えて、決勝進出を決めた。

明日は同じくA代表の山下恭平/篠谷菜留(NTT東日本)と対戦する。金子は「お互い手の内はわかっている相手で、強い相手なので、最大限準備して挑みたい。」と語った。

山下恭平/篠谷菜留
(NTT東日本)
2 22-20
21-11
0 緑川大輝
(早稲田大学)/
齋藤夏
(ACT SAIKYO)

ギリギリの戦いを勝ち切った。自信を胸に初の王座へ。

世界ランキング13位でA代表の山下恭平/篠谷菜留が、昨年の総合覇者でB代表の緑川大輝/齋藤夏と顔を合わせた。両者ともに、2022年は世界ランキングを大きく上げており調子は上向きだ。海外の大会で経験を積んだ両者の正確なショット、素早い動きに注目が集まった。

第1ゲームは、終始1点を取り合う好ゲームとなる。山下/篠谷は、山下の強打を軸にトップアンドバックの形で攻めを狙う。一方の緑川/齋藤は、緑川の強すぎるリストから放たれる鋭いドライブリターンと、齋藤のヘアピンで相手を前後左右に動かし、オープンスペースを探す。18-20と、緑川/齋藤にゲームポイントを握られるも諦めなかったのは山下/篠谷だ。「リードされても自分達が我慢できた(山下)」と言うとおり、集中力を切らさずサービス周りの攻防を制し、4連続得点で22-20とした山下/篠谷がこのゲームを奪う。

第2ゲームは、心の余裕ができたという篠谷/山下の動きがさらに良くなる。「コートを広く使えるようになった(山下)。女性同士の前衛勝負で機能することができた(篠谷)。」のとおり、4連続得点で5-2と抜け出す。終始主導権を握り、1度しか連続得点を許さなかった山下/篠谷が21-11として、初の全日本総合決勝進出を決めた。

試合後、緑川/齋藤は「1ゲーム目の20-18で、周りが見えておらず打ったドロップから流れが変わってしまった(緑川)。A代表がいる中で勝っていかないと世界で戦えない(齋藤)。」と悔しさを滲ませた。山下/篠谷は「1ゲーム目にギリギリの戦いを勝ち切り、良い流れで2ゲーム目に入れたのが勝因(篠谷)。」と充実した表情で試合を振り返った。明日の決勝戦に向けては、「(相手は)同じA代表で手の内を知っていて、現在1勝1敗のため勝ちたい(篠谷)。持ち味の粘りを出していきたい(山下)。」と、強い気持ちを胸に初の王座を狙う。

表彰式

準決勝終了後、各種目の3位入賞者の表彰式が実施された。入賞者は以下の通り(試合番号順)

男子シングルス:田中湧士(NTT東日本)、村本竜馬(ジェイテクト)

女子シングルス:髙橋明日香(ヨネックス)・仁平菜月(トナミ運輸)

男子ダブルス:山下恭平(NTT東日本)/緑川大輝(早稲田大学)、井上拓斗/三橋健也(BIPROGY)

女子ダブルス:矢﨑月子/髙崎夏実(山陰合同銀行)、大竹望月/髙橋美優(BIPROGY)

混合ダブルス:西大輝/佐藤灯(龍谷大学) 、緑川大輝(早稲田大学)/齋藤夏(ACT SAIKYO)

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