観戦記 12月30日(金)決勝

男子シングルス

桃田賢斗
(NTT東日本)
2 21-11
21-16
0 西本拳太
(ジェイテクト)

「強い桃田が戻ってきた」。桃田の時代はまだ終わらない。

2年ぶり5度目の優勝を狙う桃田賢斗が、6年ぶり2度目の王座を目指す西本と対戦した。2019年の総合で両者は決勝で戦っており、当時は桃田に軍配が上がった。直近のS/Jリーグでは桃田を破っている西本は、3年越しの雪辱を果たすことができるかに注目された。

第1ゲーム、「事前に作戦を立てていた。良い入りができた。」という西本の大きなラリーからの強打で点を取りあい7-6とするも、フェイントを用いて相手の足を止め、ミスを誘った桃田が8連続得点で抜け出す。「劣勢になっても、1度高い球で振り出しに戻し、ゆっくりラリーすることができた。」という桃田が、ミスなく丁寧に四隅を突き続ける。最後はスマッシュを沈め21-11で第1ゲームを奪う。

第2ゲームも桃田の勢いは止まらない。幸先よく4連続得点で7-3と抜け出す。「(桃田は)攻撃的なプレーと試合の中の勝負勘が優れていた」と西本の言うとおり、要所でフォアからのクロススマッシュとラウンドからのストレートスマッシュでエースを奪い、連続得点を取る。特にラウンドからのジャンピングスマッシュは、2019年に世界最優秀選手を獲得した際のプレーを彷彿とさせるものだった。最後はプッシュを沈め大の字に倒れ込み、ガッツポーズをNTT東日本のチームメイトに向けた。21-16で2年ぶり5度目の優勝を決めた。

試合後、西本は「自分にできることはしたが、想像以上に相手のプレーが良かった。」と試合を振り返り、「前回のオリンピックレースは色々な面で甘かった。同じ失敗はしないよう、細かいところまでこだわり、強い気持ちで勝ちにこだわっていきたい。」と今後のオリンピックレースへの強い気持ちを語った。桃田は「昨日の2ゲーム目で、田中湧士(NTT東日本)が自分のプレーを思い出させてくれた。この試合は自分でも納得いく試合ができた。1年間苦しい中考え抜き、勝ち取った優勝なので、これまでと比べ物にならない程嬉しい。」と充実した試合内容を振り返り、「インターネット上で『桃田の時代は終わった』と書かれるが、自分はまだ辞めたくない。もっと強い桃田を見せていきたい。」と話した。新しく生まれ変わった「強い桃田」に注目だ。

女子シングルス

山口茜
(再春館製薬所)
2 21-13
21-15
0 大堀彩
(トナミ運輸)

最強の証明。2022年世界ナンバーワンの山口が危なげなく4度目の女王に輝く。

今年の国際大会ビッグタイトルを総なめにし、世界ランキング1位で名実ともに世界最高のプレーヤーとなった山口茜。バドミントンファンの期待を一身に浴びて決勝戦の舞台に登場した。対する大堀彩も今大会は危なげなくストレート勝利を続けてきており、悲願の女王奪取なるか、注目が集まった。

第1ゲーム、「自分でスピード感をもって積極的に攻撃していくプランを立てていた」という山口は、ネット前ではことごとくラケットを立てたダブルスのような高速タッチで相手を振り切り、リアコートでは狙いすましたスマッシュ、ドロップを沈めて早々にラリーのペースを掴む。対して、攻撃力に定評のある大堀も、攻めどころでは強力なスマッシュを突き刺して応戦する。序盤の点の取り合いを先に抜け出したのは山口。バックハンドサービスに切り替え、よりスピードが生きる組み立てを講じると、たちまち得点を重ねてリードを広げていく。素早さと柔らかさを兼ね備えた動きで、安定してラリーを制した山口が21-13でこのゲームを奪う。

第2ゲーム、引き続き速い展開で繰り広げられる山口の多彩なショットに対し、大堀も粘りを見せ、わずかなチャンスで厳しいショットをライン際に決めるなどして、互角の立ち上がりとなる。中盤、大堀もスピードを上げて勝負に行くが、ショットの技術力、精度で上回る山口が流れを渡さない。随所に騙しのショットを交えて相手を揺さぶる。特に山口の17点目となったシーンは印象的で、激しいラリーの末に放ったディセプションに、大堀は一歩も動くことができず、バック奥にシャトルが落ちた。大堀が「技術面で足を止められてしまった、ネットやロブの精度の差が今の実力差だと感じている。」と話すほど、山口のショットは冴えわたっていた。最後も山口が放ったディセプションの低いロブに、大堀は反応が遅れてハイバックがサイドアウト。21-15とした山口が世界女王の実力を示し、4度目の総合制覇を決めた。

試合後の記者会見で山口は、「(今日の試合は)先手先手をとることができ、相手の技術を発揮させる隙を与えずに戦えた。」と、充実した試合を振り返った。また、「今年は自分が想像していた以上に良い結果がたくさんついてきた1年になった。来年は例年以上に大会が多くなっているスケジュールなので、まずは怪我なく元気に戦い抜きたい。その中で選手として成長していけたらと思う。」と話し、まだまだ成長を止めない姿勢を示してくれた。

男子ダブルス

保木卓朗/小林優吾
(トナミ運輸)
2 21-16
21-14
0 竹内義憲/松居圭一郎
(日立情報通信エンジニアリング)

どうしても取りたいタイトルだった。競技人生最大の目標へ、最高のスタートダッシュ。

2022年国際大会で2度優勝している世界ランキング2位の保木卓朗/小林優吾が、世界ランキング27位の竹内義憲/松居圭一郎と対戦した。両者ともに総合初優勝に向け、気持ちを全面に出したプレーが予想された。

第1ゲーム、「向かっていくことだけをテーマにして臨んだ(保木)」という保木/小林が強気なプレーでスタートダッシュに成功し、6連続得点もあり10-3とする。竹内/松居は、松居が前衛、竹内が後衛の形を作って攻撃を試みるも、保木/小林ペアの重いドライブに対応することができず攻めあぐねる。ドライブを打ち合う低空戦を制した保木/小林が終始主導権を握り、21-16で第1ゲームを奪う。

第2ゲーム、低空戦で1点を取り合い7-7となるが、「大会期は絶対に負けられないと思って臨んでいた(小林)。」という保木/小林が積極的に前に詰め、浮いた球をプッシュし流れを掴む。7連続得点で抜け出すと、「世界で勝ってきた自信があった(保木)。緊張の中でも、球を選びながらプレーできた(小林)」のとおり、世界ランキング2位の貫禄あるプレーで一度もリードを許さない。21-14で優勝を決めた瞬間、保木/小林ともに雄叫びを上げ、初優勝の喜びを噛み締めた。

試合後、竹内/松居は「楽しんで、自分達のプレーをすることができた(竹内)。大会を通して、自分達の得意なプレーをやり切ることができた(松居)」と満足した様子が伺え、「オリンピックレースを気にしすぎず、一戦一戦、一球一球頑張っていきたい(竹内)。連戦になるため、健康面を整えて毎試合ベストなパフォーマンスをしたい(松居)」とオリンピックレースへの意気込みを語った。

見事栄冠を勝ち取った保木/小林は、「これまで3度決勝の舞台に立ってきたが全て負けてきたため、どうしても取りたいタイトルだった(保木)。大きな舞台で優勝できて嬉しい(小林)。」と優勝の喜びを露わにし、今後に向けても「競技人生最大の目標がパリ五輪(保木)。1年間戦い抜けば勝てる自信がある。怪我が多いため、故障しないように心がけたい(小林)。」と、この優勝を自信にかえて突き進む姿に期待だ。

女子ダブルス

櫻本絢子/宮浦玲奈
(ヨネックス)
0 16-21
18-21
2 福島由紀/廣田彩花
(丸杉)

怪我で苦しんだ1年からの見せた福島/廣田が2大会ぶり4度目の優勝

鉄壁のレシーブとラリー力はもちろん、後衛の福島と前衛の廣田で培ってきたハイレベルなコンビネーションで今大会圧倒的な実力を見せつけてきた福島/廣田。そして、今年6月から本格的にペアを組み始め、9月の全日本社会人選手権で優勝、強気のバドミントンで今大会この決勝の舞台まで勝ち上がってきた櫻本/宮浦。この2ペアが日本一の座を争った。

第1ゲーム、長いラリー戦で幕を開ける。今大会、多くの選手が風によるシャトルの影響を口にするように、どちらのペアも様々な球種でシャトルの感触を確かめる。最初に仕掛けたのは櫻本/宮浦、ここまでの勝ち上がりで自信を深めてきた連続アタックで挑む。しかし、この決勝で戦っているのは世界で戦ってきた鉄壁のレシーブ力を持つ福島/廣田、中々決めさせてくれない。そして、大きな転機を見せたのは15-14の場面。甘くなったシャトルは一気にスピードを上げてネット前で決め、確実に点数に繋げて相手にプレッシャーを与えた福島/廣田に対し、この場面で攻め急いでしまった櫻本/宮浦は立て続けにミスを重ねてしまい、6連続失点で苦しい展開となった。最後は相手のミスに救われた福島/廣田がリードを保って、第1ゲームを21-16で優勝へと王手をかける。

第2ゲーム、先ほどのゲームは攻め急いでしまった櫻本/宮浦は出だしの戦略を変え、落ち着いたレシーブでラリー戦でスタートし、福島/廣田の本来の形を取らせないよう、積極的に廣田を後ろに下げる配球でチャンスを伺う。一方、福島/廣田は変わらず安定したレシーブと繋ぎ球で右左ペアでは空いてしまうセンターにシャトルを集めて櫻本/宮浦のコンビネーションを崩す。終始リードを保っていた福島/廣田であったが、「第2ゲーム、リードしていた時に自分のミスが少し出てしまったが、福島先輩が粘ってくれたこともあり持ちかえせた。(廣田)」と振り返ったように、中盤から後半にかけて連続得点を与えてしまうも逆転を許すことはなく、最後は廣田がコート左側へのスマッシュで櫻本/宮浦の両者を寄せてから鋭いクロススマッシュをコート右側ライン状へと突き刺し、21-18のストレートゲームで優勝を決めた。

「出だしから自分たちの形で点数を取れていたのは良かったと思うが、相手のしぶといレシーブに負けて自分たちにちょっとずつミスが出てしまった。一点の重みをこの試合ですごく感じた。この大会で良いところも悪いところも出たので、それを来年の課題にできたらと思う。」と振り返った櫻本/宮浦。本格的に組み始めてまだ浅いにもかかわらず、十分に今の実力を見せつけたこのペアに今後注目したい。

そして、2大会ぶり4度目の優勝を果たした福島/廣田は「今年はフクヒロらしいプレーができていなかったのですが、今大会はフクヒロらしい戦い方ができていたと思う」と福島。「怪我からの復帰後、楽しい試合ができていなかったが、今大会は初戦から楽しく戦えた。二人らしいプレーができている時は結果が出ていると思うので、来年も引き続き二人らしいプレーを続けていきたいと思う。」と廣田が振り返った。「来年は試合数も増えることもあり、まずは怪我をせず一試合一試合を自分たちがどこまでできるか、どこまで勝つことができるかを大事にしていきたい。」と最後に来年への抱負を福島が語った。

今年怪我に悩まされた二人だったが、来年更なる復活と飛躍に期待したい。

混合ダブルス

金子祐樹/松友美佐紀
(BIPROGY)
2 21-18
21-15
0 山下恭平/篠谷菜留
(ジェイテクト)

カネマツ結成しての初V。手応えも感じつつその先の目標へ、鍛錬は続いていく。

2020年秋からペアを結成し、海外転戦を行っている金子/松友組。前回出場の2年前に続き決勝戦の舞台に登場した。対戦相手は同じA代表にして、世界ランキングで金子/松友の1つ下につけている山下/篠谷。共にここまで全試合ストレート勝利を続けており、実力も拮抗する両ペアによる白熱必至の決勝戦が幕を開けた。

第1ゲーム、互いに撃ち合う激しいラリーを幸先よく決め切ってスタートした金子/松友が、わずかながらも確実にリードを保って進めていく。どこからでも強い球を送り出してくる山下/篠谷に対し、松友が積極的に潜り込んでネット前で抑え込み、質の高いヘアピン、プッシュで仕掛けては金子が左右にスマッシュを打ち分けて決めていく。後半にはスピードを上げた山下が強打を次々に決め、山下/篠谷が13-13と追いつく。しかし、緩急や高低差をうまく織り交ぜた効果的な攻撃を見せた金子/松友が抜け出し、21-18でこのゲームを奪う。

第2ゲームもハイレベルなラリーで始まる。篠谷が果敢な飛び出しを見せて決定機を多く演出するなど、前ゲーム以上に互いが持ち味を発揮し、接戦で得点を奪い合っていく。均衡が崩れたのは11-11の場面。篠谷が放ったロングサービスがアウトになり、チャレンジを申し出るも失敗。ここから金子/松友が好プレーを連発する。相手の強打に松友がよく反応してリターンエースを決めたり、金子が高めのスマッシュやハーフスマッシュで相手のディフェンスを崩すなど、力に頼り切らない得点の奪取でリードしていく。対する山下/篠谷も、山下がよく足を動かして強打を打ち込み攻勢を仕掛けるが、冷静に対応した金子/松友が1枚上手だった。最後は山下の強力なクロススマッシュを金子がクロスリターンで沈め、21-15とした金子/松友が全試合ストレート勝利を決め、初の栄冠に輝いた。

初のトーナメント制覇を果たした金子は「今まででは決め切れずにラリーが長くなってしまうこともよくあったが、だんだん決められるようになってきた。海外でも決められるように磨いていきたい。全日本を取ることを目標にペアを結成したわけではないので、ここから国際大会で結果を残せるように、また次に向けてしっかりとやっていきたい。」と、自身の成長と今後への強い決意を語った。個人としては8年ぶりの混合ダブルス優勝となった松友も「全ての試合をしっかり勝てたことはよかった。日を重ねるごとに少しずついいプレーが出来るようになってきた。」と制覇までの試合を評価する一方、「まだまだ全体的にレベルアップも必要。ゆっくりやっている時間もないので、また更に2人で頑張っていきたい」と、先の目標に向けて気を引き締めた。

観戦記一覧に戻る