NTT東日本の同門対決となったこの試合、日本のエースとして総合のタイトル奪取を誰よりも期待されている奈良岡 功大と2年連続の決勝戦を戦う22歳の成長株・武井 凛生の、どちらが勝っても新チャンピオンが誕生となる。歴史の一幕となるにふさわしい、緊迫した試合が繰り広げられた。
第1ゲーム、随所にテクニックを見せて巧みにラリーを組み立てる奈良岡が抜け出して先行する一方、武井はアタックを大事にした王道のプレーで挑んでいく。後半はショット・ラリーの安定性を高めた武井が追い上げを見せるも、要所で抑え込んだ奈良岡が21-17で奪った。
第2ゲームもスタートから奈良岡は軽快に脚を動かし、持ち前のショットの引き出しの多さを発揮して、ウイニングショットもライン際に突き刺し4連続得点と絶好の入りを見せる。しかし武井は我慢して、チャンスでは積極的に打ち込んでいく姿勢を見せて、プレッシャーをかけ続けてまくり上げ、13-6と一気に抜け出す。精度高くショットを操った武井がそのまま得点を重ね、21-10としてイーブンに持ち込んだ。
迎えたファイナルゲーム、もう一度集中して序盤から自身優位のラリーを作りたい奈良岡だったが、抜群のボディバランスとトップスピードの維持で攻守に好プレーを重ねた武井が11-9とリードして折り返す。チェンジエンズ後、勝負のスイッチを入れた奈良岡が追いつくと、互いに全身全霊を尽くしての死闘となる。14-14以降、奈良岡は得失点一つ一つに感情を大きく表現しながら集中して「それまでクロスのショットが多かったところ、急にストレートでフォア奥に球を集められて自分がミスをしてしまった。経験値の差が出てしまった」と武井が振り返ったように、ラリーの組み立てを変えて押し込む奈良岡が畳みかけ、最後はクロスネットで決めて21-17、晴れて王者の称号を得た。
「タフな試合が多かった今大会、最後にファイナル90分、勝ててよかったです。この1年は国際大会でも1・2回戦負けも多くて苦しかったが、11月の熊本マスターズジャパンで優勝できて、ようやく終盤にいい形を作れ、総合も勝ててよかった。この優勝はコーチであり父である奈良岡 浩に捧げたい」 と語り、安堵と喜びが同居する感情を吐露した奈良岡、この栄冠を糧に世界でのさらなる活躍に期待したい。一方、2年連続の準優勝となった武井は「チーム内の練習では分があった。本番では奈良岡選手は3倍くらい強いだろうと、昨晩からしっかり身体も整えて挑んだ。最後に自らのミスで落としてしまったが、アタックは通用したし、1年の成長は感じられた」と、悔しいながらも充実の大会を完遂した。
いずれも総合初優勝は高校時代と、若くして一線級の選手として戦う2人。過去4度の優勝を誇る日本が誇るレジェンド・山口 茜(再春館製薬所)と、2連覇を目指すヒロイン・宮崎 友花(ACT SAIKYO)による決勝は、名実ともに日本最強を決める戦いとなった。
第1ゲーム、立ち上がりは宮崎が積極的に仕掛けて先行するも、山口が8連続得点で11-8と前半のうちに逆転する。守っては懐の深さから的確なリターンから大きく相手を動かしてミスを誘い、攻めても勝負所で一気にスピードを上げて確実に決めるなど、経験の差を見せた山口が21-14で先取した。
第2ゲームも引き続き山口ペースで進んでいく。しかしそこに待ったをかける宮崎は、後半には主体的な攻撃でラリーのリズムをつかみ、クロススマッシュと素早い詰めからのプッシュで得点パターンを作ると、徐々にショット全体の精度も上がっていく。最大8点差を18-18で追いつくと、スピードある高強度ラリーを続けて、23-21で奪い返した。
ファイナルゲームはそれぞれの力を出した点の取り合いから、4連続得点を奪った山口が11-8と抜け出して折り返す。「ファイナル序盤は苦しかったけど、相手が攻めてくるところを何とかしっかりレシーブして、自分が決めるではなく相手のミスを誘うように割り切ってプレーした。最後は楽しんでやれた」という山口は、持てる技術・スピード・テクニックを遺憾なく発揮し、そのまま駆け抜けて21-13として5度目の女王に返り咲いた。
「今年は想像以上に結果としては安定していた1年だった。特に後半はプレーの内容も充実していた。それでも世界の最上位(世界ランキング上位4人の山口以外の3人)とは分が悪いので、来年もっと近づいていけるようにまた頑張りたい」と語った山口、あくなき向上心、バドミントンへの貪欲さを見せるレジェンドは歩みを止めない。
一方、惜しくも連覇とはならなかったがファイナリストとして世界のトップランカーらしい戦いを見せた宮崎は、大会を振り返り「大きい大会に出ると、1回戦から強い相手だったり、自分のスピードがなかなか出せない中で試合をしたりとなる。今大会は5試合を終えて、徐々にいいペースをつかめたので、このペースを忘れないようにしたい」と語り、さらなる成長を予感させた。
大会2連覇がかかる山下 恭平/緑川 大輝(NTT東日本)と、悲願のタイトル獲得を狙う岡村 洋輝/三橋 健也(BIPROGY)が決勝で顔を合わせた。
第1ゲーム、「出だしから自分の足が動いておらず、2人でそれぞれ単発の攻めになってしまい、ペアとして機能しなかった(岡村)」という岡村/三橋をしり目に、山下/緑川は強固なディフェンスと自在のペース変化を駆使して次々に得点を奪い、終始優位な試合運びで21-13として快調に奪った。山下の反応と強打、緑川のラケットワークと配球と、ストロングポイントが目立ったゲームとなった。
第2ゲームに入っても一方的にラリーを支配する山下/緑川は、12-4と大量リードを奪う。このまま圧倒していくと思われた中、「開き直ってやれた」という岡村/三橋が連続攻撃を仕掛けて猛追していく。連打から効果的なボディへのショット、リアサイドを突くショットで好機を作って決めていき、16-18から4連即得点で逆転、ゲームポイントを握る。その後延長ゲームに入ってもさらに2度のゲームポイントを得るなどアタックで押していった岡村/三橋だったが、あと1本が届かなかった。「我慢して自分たちのプレーを出し切った(山下)。最後までミスらず、気持ちを切らさず2人で戦えた(緑川)」という山下/緑川が、この1年で強化したコンビネーションでしのぎ、決めて23-21として総合2連覇を成し遂げた。
最高の笑顔で優勝をかみしめた王者も、このタイトルはあくまで通過点。「この1年、海外では思うような結果が出せない時期が続いた。来年こそはいい結果を出せるように頑張りたい」と山下が語れば、緑川も「これからは世界ランキングを何としてでもあげていきたい。日本の保木/小林ペア頼みの状況を打ち破りたい」と、ここからの躍進への思いは強く語った。
櫻本 絢子/廣田 彩花(ヨネックス/岐阜Bluvic)と志田 千陽/五十嵐 有紗(再春館製薬所/BIPROGY)という、コート上の全員が総合チャンピオンになったことのある(五十嵐は種目が混合ダブルス)実力者ぞろいの決勝戦。両ペア共に、今夏以降に組みながらここまで勝ち上がってきた規格外の強さが存分に発揮される熱戦となった。
第1ゲーム、互いにハイレベルな攻守でタフなラリーが多く展開される中、スピード感あるコンビ攻撃で点数を重ね先行していく志田/五十嵐がリードして進め、18-13とする。対して、しっかり押し返した大きな展開から櫻本の強打を起点に畳みかける櫻本/廣田は、19-19で追いつくと、ディフェンス時に高いポジションで球をさばき、プレッシャーをかけたことも功を奏し、最後は相手(志田)ショットのサイドアウトを誘って22-20として逆転のゲーム奪取に成功する。
接戦模様が続く第2ゲーム、志田/五十嵐が先行しつつも、対照的な配球で互いに点を取り合う。櫻本/廣田は櫻本が相手のセンターへのスマッシュを多用し、廣田が前で壁となってプッシュ、ドライブを突くパターンを増やし、志田/五十嵐はうまく相手のボディ周りを使いながら速い展開で崩してチャンスを作って決めていく。12-12で一度追いつかながらも、何とか要所を抑えて再度先行した志田/五十嵐は、最後は五十嵐のスマッシュがネットインとなって21-18とし、ファイナル勝負に持ち込んだ。
死力を尽くすファイナルゲーム、攻撃の時間を増やして攻め立ててリードを奪う櫻本/廣田を、志田/五十嵐が追いかける展開となる。リードされながらも、低い展開での優位性を保ち、スムーズに攻撃へとつなげるラリーを増やした志田/松山は、終盤に疲れが見える相手を崩し、17-16と逆転する。ここからは五十嵐が驚異の集中力で前をさばき、志田も徹底した攻撃で応えるとポイントを与えることなく一気に駆け抜け、21-16とした志田/五十嵐が優勝をつかんだ。
「自分自身新しい挑戦、あたし依ペアで、今大会を絶対に優勝したいという気持ちが強すぎて体が動かなかった。五十嵐がずっと声をかけてくれて、引かずに攻めてくれて、最後は自分が入れれば何とかしてくれる思い戦った。勝ててよかった」と、厳しい戦いを終えた志田は喜びを語った。「ここというときに力を振り絞ってさいごまでやろうという思いでできたので、いい経験になった」という五十嵐は、女子ダブルスでの初の栄冠を充実のマインドで終えた。これから世界の頂点を目指した戦いが本格化する2人の、新たな物語が楽しみだ。
志田 千陽(右)/五十嵐 有紗(再春館製薬所/BIPROGY)
志田 千陽(中央左)/五十嵐 有紗(再春館製薬所/BIPROGY)、櫻本 絢子(右)/廣田 彩花(ヨネックス/岐阜Bluvic)
志田 千陽(右)/五十嵐 有紗(再春館製薬所/BIPROGY)世界で勝つ、そんな明確な目標の下に結成した両ペアが決勝戦で激突した。昨年結成の渡辺 勇大/田口 真彩(J-POWER/ACT SAIKYO)と、今大会がペアデビュー戦の緑川 大輝/松山 奈未(NTT東日本/再春館製薬所)。共に世界のトップへ駆けあがっていくための足掛かりとして、総合タイトル挑戦の大一番となった。
第1ゲームは互角で折り返したのち、いち早くコンビネーションでスピードに乗った緑川/松山がテンポよく球を沈めて抜け出し21-15で奪う。
第2ゲームはサービス周りからスペースを巧みに突いた速攻で渡辺/田口がペースをつかみ、開始から6連続得点とリードを奪うと、相手を動かしての田口のクロスネット、渡辺のクロススマッシュが冴えて有効打となり、一気に駆け抜けて21-9で奪い返す。
ファイナルゲームに入って抜群の集中力を見せたのは百戦錬磨の渡辺だった。際限なく上がるスピードと、ひとたび攻め込めばミドル・フロントコートで緩急豊かに決定打のオンパレードで、相手に「メリハリあるプレーについていけなかった(松山)」と言わしめるほどの圧倒的な強さを見せる。そのスピードに田口もしっかりとついていきハイレベルで前衛が機能、最後はネット前でつかまえて沈めて21-11、渡辺/田口が嬉しい初優勝を飾った。
試合を振り返って、渡辺は「守るときは守る、そして大きな展開は四隅をしっかりと使うことで、しっかり攻めに回っていい試合ができた」と納得の表情を見せれば、田口も「第2ゲームからはしっかり前衛で止めて勝負ができた」と語り、栄冠を手中に収めた自信とともに1年の成長と今後の期待を感じさせた。改めて世界へのスタートを切った渡辺/田口の今後の飛躍が楽しみだ。