大会の見所 女子シングルス

山口茜が優勝筆頭候補
東京五輪のメダリストたちを迎え討つ

山口茜(日本)
山口茜(日本)

 5種目で日本がもっとも金メダルに近いとされているのが女子シングルスだ。昨年12月の世界選手権で初優勝した山口茜は、日本勢で唯一、第1シードに就いている。今年も権威ある全英オープンを制すなど好調で、狙うはもちろん2連覇だ。

 8月6日の記者会見では、「連覇に挑戦できるのは自分だけ。楽しみながらプレーしたい」と気持ちを高めている。

 会場となる東京体育館との相性もいい。2013年のヨネックスオープンジャパンもこの1万人を収容できる大舞台で開催され、16歳3カ月の山口は最年少記録でスーパーシリーズ初優勝(ワールドツアーの前身)を飾った。

 「(大きな)東京体育館では、シャトルのスピードがゆっくりに感じるので、焦らず大きな展開でラリーができる」と山口。多彩な配球力を発揮しやすい舞台でふたたび頂点を奪いにいく。

東京五輪のメダリストたちも存在感

陳雨菲(中国)
陳雨菲(中国)

 山口の対抗馬は、昨年の東京五輪のメダリストたち。金メダルの陳雨菲(中国)、銀メダルの戴資穎(チャイニーズ・タイペイ)、銅メダルのプサルラ・V. シンドゥ (インド)は、それぞれ個性は異なるも、世界女王の座を虎視眈々と狙う。

 このうち、山口と準決勝で当たる可能性があるのは、女子シングルス界きっての攻撃型・シンドゥ。179センチの長身から角度あるスマッシュを沈め、2大会ぶりの優勝をつかみにくる。最初の山場は、伸び盛りの22歳・王祉怡(中国)との3回戦になるだろう。

 東京五輪の決勝で戦った陳雨菲と戴資穎は、順当に行けば準決勝で当たる見込み。金メダリストの陳雨菲は、コートを広くカバーできる足で対抗し、前回、準優勝の戴資穎は、巧みなラケットワークで対戦相手の足を止めにかかる。

韓国の20歳・安洗瑩が新女王に名乗りを挙げるか

奥原希望(日本)
奥原希望(日本)

 成長著しい若い選手が山口や五輪メダリストの足をすくう可能性もある。修羅場を知り尽くす選手たちがもっとも恐れるのは、20歳のライジングスター・安洗瑩(韓国)だ。鋭いカットを有効に使い、東京オリンピック後の主要ワールドツアーで5勝を挙げた。挑戦者の強みを生かし、実力者たちに立ち向かう。

 2018年以前のチャンピオンも健在だ。2016年リオデジャネイロ五輪の金メダリストで、世界選手権で3度制したキャロリーナ・マリン(スペイン)は、完全復活Vを期して臨む。21年6月に左ひざのじん帯を断裂し、東京五輪は欠場したが、今春、復帰を果たした。6月の女子国別対抗戦・ユーバー杯で6戦全勝の何冰嬌(中国)と当たりそうな3回戦を無事に抜ければ、波に乗るかもしれない。

 また忍耐力なら誰にも負けない2017年優勝の奥原希望(日本)は戴資穎と、2013年に史上最年少の18歳で優勝したラチャノック・インタノン(タイ)は陳雨菲と、それぞれ勝ちあげれば準々決勝で顔を合わせることになる。奥原は昨年10月に手術した右足が完治せず、前回大会を欠場したが、今大会に向けては「ラリーで勝負ができる自信がある」と晴れやかな表情で話した。

 このほか、日本からはベテランの髙橋沙也加、25歳の大堀彩が上位進出を目指す。ともに左腕からの切れ味鋭いスマッシュを相手コートに突き刺せれば、勝機は見えてくるだろう。

本記事は2022年8月15日時点での情報を元に作成されています。

『写真:BADMINTON PHOTO/日本バドミントン協会/T.KITAGAWA』
『PHOTO:BADMINTON PHOTO/NBA 2022/T.KITAGAWA』

世界選手権・女子シングルス優勝者
(2013~2021年)
2021年 山口茜(日本)
2019年 プサルラ・V. シンドゥ (インド)
2018年 キャロリーナ・マリン(スペイン)
2017年 奥原希望(日本)
2015年 キャロリーナ・マリン(スペイン)
2014年 キャロリーナ・マリン(スペイン)
2013年 ラチャノック・インタノン(タイ)
世界選手権2021メダリスト
金メダル 山口茜(日本)
銀メダル 戴資穎(チャイニーズ・タイペイ)
銅メダル 何冰嬌(中国)
銅メダル 張藝曼(中国)