男子シングルス1
粘るベテランを2段、3段、さらにギアを上げて圧倒
ロー・ケンユー(シンガポール) 21-12 / 11-21 / 21-12 ケビン・コルドン(グアテマラ)
前回王者で世界ランキング8位のロー・ケンユーと東京五輪4位で世界ランキング40位のケビン・コルドンが対戦する。ロー・ケンユーは25歳、驚異のコートスピードを武器に世界ランキングもキャリアハイとまさに脂ののった状態と言える。一方のケビン・コルドンは35歳と大会出場者の中でも最高齢に近い。若手の新鋭と円熟味増す左腕と対照的な二人がどう戦うか予想しつつ、試合の幕が開けた。
1ゲーム目、軽い足運びと素早い反応のロー・ケンユー、長い手足を活かしたガッツあるプレーのケビン・コルドンが点を取り合う。動きがほぐれてきたロー・ケンユーが攻め立てて6連続ポイントで勢いづき、21-12で奪う。
2ゲーム目、スピードがあることへの諸刃の剣なのか、ロー・ケンユーはタイミングが合わずミスをしてしまう場面が見られる。一方のケビン・コルドンは、182㎝の長身と左腕を活かした前後・左右に角度ある強打を打ち分けて着実に得点を重ねていく。勝負はファイルゲームへと持ち越される。
ファイナルゲームは、「気持ちと切り替えてベストを尽くした」というロー・ケンユーの独壇場となる。ケビン・コルドンをして「1ゲーム目のスピードも速すぎたが、ファイナルゲームはもっと速かった」と言わしめたスピードで7連続ポイントを奪うなどして、ロー・ケンユーが、21-12とし、連覇に向けての初戦で勝利を挙げた。
男子シングルス2
長いラリー戦、死力を尽くすも最後はミスに泣く
クンラブット・ヴィチットサーン(タイ) 21-18 / 21-11 奈良岡功大(日本)
日本の次期エース、世界ランキング31位の奈良岡功大は同世代で世界ランキング17位のクンラブット・ヴィチットサーンと顔を合わせた。2018年の世界ジュニア決勝では、9本11本でクンラブット・ヴィチットサーンが優勝を決めている。
第1ゲーム、「早い展開が得意なので、ラリーをしようとした」という作戦だったという奈良岡が大きなクリア、ドロップを多用して、ゆっくりしたラリーが展開される。56打、67打、68打と男子シングルスではほとんど見られないラリー数となるが、いずれもクンラブット・ヴィチットサーンが決めている。68打のラリーでは、リアコートへのロブに奈良岡が追えず見送ると両者倒れ込む姿が見られる。「昔は、疲れてミスをしてくれたのに、今回はミスしなかった。(クンラブット・ヴィチットサーンの)成長を感じた」と奈良岡が振り返ったように、コロナ禍でも国際大会へ参加していた経験の差が出たのかもしれない。39分の長丁場を21-18でクンラブット・ヴィチットサーンが奪う。
第2ゲーム序盤、3連続でクンラブット・ヴィチットサーンにミスが出て、ラリーを嫌がっているように見え、9-4と奈良岡リードする。しかし、奈良岡が連続でレシーブをミスしてしまい、クンラブット・ヴィチットサーンにつけ入る隙を与えてしまう。さらに、終盤にはラリーの肝となるクリアの精度を維持できずアウトしてしまう。我慢のラリーを続けたクンラブット・ヴィチットサーンが21-11で3回戦進出を果たした。
試合後、奈良岡は「初めての世界選手権は楽しかった。楽しさと自分のプレーができなかった悔しさの半々。次のダイハツ・ヨネックスジャパンオープンに向けて調整したい」と前を向いた。
男子シングルス3
攻撃的プレーに徹したプラノイが、アウェーで嬉しい桃田戦初勝利。
H.S.プラノイ(インド)21-17/21-16桃田賢斗(日本)
2018年、2019年の世界選手権覇者でありながら2020年1月の事故負傷後の停滞に苦しみ、この日本での復活を期す桃田賢斗が登場。H.S.プラノイとの2回戦に臨んだ。
第1ゲーム、丁寧にラリーを組み立てる桃田に対して、積極的なアタックでシャトルを沈めるプラノイが10-5とリードを奪う。桃田はドリブンクリアの多用や足を動かした粘り強いレシーブから、相手の体勢を崩して決めに行くスタイルで1点差まで迫る場面もあったが、プラノイを捉えきれない。鋭いオーバーヘッドショットの打ち分けと素早いチャージで攻撃に徹したプラノイが、強引にプッシュをねじ込み、21-17と先取した。
リターンのタッチを早めた桃田の3連続得点で幕を開けた第2ゲーム、観客の拍手応援の後押しも受けて優位にゲームを進めたいところであったが、プラノイのサイドライン際への的確なショットに苦しめられ、早々に逆転を許す。「ミスを恐れて消極的になってしまい、気持ちで押すプレーが出来なかった」という桃田は、得意のネットプレーでも精彩を欠く場面があるほか、要所でストリングスが切れたり、相手ショットのネットインに悩まされるなど、流れを引き寄せられない。一方のプラノイは、ラウンドからのストレートスマッシュが冴えを見せるなど、次々に球を沈めていく。完全に流れを引き寄せると、スライスショットがネットインとなり20点目。最後はクリアをラインギリギリに決めて21-16とし、対桃田戦の初勝利を掴んだ。
悔しい敗戦となった桃田は試合後、「この大会で復活したいという思いだったのでとても悔しい。自分の持ち味はスマッシュではないので、色々なショットを攻撃的にしていきたかったが、1点が欲しい、負けたくないなどの気持ちが邪魔をして、(試みが)上手くいかなかった。」と振り返った。それでも、「復活したい気持ちは変わらない」という言葉は力が込められていた。1大会でも早く、トーナメントを制する強い桃田のカムバックが待ち望まれる。
男子ダブルス
負けられない日本人ペア対決、古賀/齋藤が巧さを見せて接戦を制す。
古賀輝/齋藤太一(日本) 21-17 / 19-21 / 21-15 松居圭一郎/竹内義憲(日本)
現在の日本男子ダブルス2番手争いをしている古賀輝/齋藤太一と松居圭一郎/竹内義憲が相まみえた。世界の上位選手に食い込んでいくためにも、どちらにとっても負けられない一戦となる。
第1ゲーム、互いに鋭いショットの応酬で点を取り合っていく。古賀/齋藤は古賀がアグレッシブなプレーで牽引し、一方の松居/竹内は松居が積極的にネット前に詰めてシャトルを抑え込むなどし、自分たちのプレーを引き出していく。終始リードしつつも引き離せない古賀/齋藤だったが、18-17の場面で激しいラリーを古賀のカウンターショットで制すると、勝負どころの集中力を見せ連続得点を奪い、21-17で先取する。
第2ゲームに入り、更に動きが良くなった古賀/齋藤は早いタッチと連続攻撃で攻め切る場面も増え、リードを奪っていく。そのまま決めるかと思われたが、松居/竹内は強打を巧みにコースに打ち分けて盛り返す。最大5点のビハインドだったが、17-19の場面から一気に畳みかけて連続得点を奪い、最後は竹内がセンターに放ったスマッシュが決まり、21-17で松居/竹内が奪い返す。
長期戦となったこの試合、最後まで輝いたのは古賀だった。ファイナルゲームの疲れを感じさせない躍動感あるプレーで、素早い読みと強打を炸裂させて流れを引き寄せる。ここまで低い展開からの攻撃転換で勝っていた松居/竹内だったが、要所で古賀に押し込まれて、リードを奪うことが出来ない。古賀/齋藤は、後半には齋藤が決める場面も増え、徐々にリードを広げて21-15として、75分に及んだ試合をものにした。
女子ダブルス1
初戦の緊張の中、白星発進
永原和可那/松本麻佑(日本) 21-17 / 21-18 ベンヤパ・アイムサード/ヌンタカーム・アイムサード(タイ)
3度目の優勝を狙う世界ランキング6位の永原和可那/松本麻佑が世界ランキング29位のベンヤパ・アイムサード/ヌンタカーム・アイムサードと対戦した。「世界選手権2度の優勝は忘れて初心で。日本で初めてなので、楽しみにしていた。楽しんでやりたい(永原)」という永原/松本ペアは挑戦者の気持ちで挑んだ。
第1ゲーム、「日本のお客さんの前で試合が出来て緊張した」と永原がいうように、プレーに硬さが見られ、序盤はお互いに点を取り合う。「シャトルが飛ばないので、スマッシュが決まらず、ラリー展開になる。どれだけ我慢できるか(松本)」の通り、レシーブで崩してから、長身からの強打で得点を重ねていく。21-17で永原/松本が奪う。
第2ゲームに入っても、永原/松本の武器のスマッシュがなかなか決まらず、我慢の展開は続く。13-11からタイペアに左右動かされて4連続ポイントを奪われる。「流れがよくなかったが、終盤スピードを上げて決めきれたのがよかった」と松本が振り返ったように、早いタッチでチャンスを作って強打に決めるなどして逆転。最後は松本がスマッシュで決めて21-18とする。
試合後、「コンディション自体は悪くない。今日はシャトルが飛ばなくて、打ち込まれてしまった。初戦なので仕方がない部分もあるが、明日以降しっかり修正していきたい。」と松本が話した。
女子ダブルス2
上位定着を目指した戦い、尻上がりに巧さを見せた日本ペアが勝利を掴む。
岩永鈴/中西貴映(日本)23-21/21-15デボラ・ジャイル/シェリル・セイネン(オランダ)
昨年の世界選手権でベスト8、今年のアジア選手権で準優勝と、大きな舞台でも結果を出せるようになってきた世界ランキング21位の岩永鈴/中西貴映が、世界ランキング38位のデボラ・ジャイル/シェリル・セイネンとの初戦に臨んだ。
第1ゲーム、交互に連続得点を奪い合う大味な展開となる。岩永/中西は相手ペアの間を突いた攻撃を有効打に組み立てれば、デボラ/シェリルはテンポよくジャンプ気味のスマッシュを繰り出して得点を重ねる。互いに飛び出す決め手に欠けたゲームだったが、最後は長いラリーで相手のミスを誘った岩永/中西が23-21として奪う。
第2ゲームは、大きくコート内を揺さぶる展開でお互いが相手のミスを誘い、またもや接戦模様を見せる。しかし、比較的速い展開を好むオランダペアに対し、岩永/中西は長い手足を活かしてチェンジオブペースを巧みに操り、要所で中西が効果的なアタックを決めて6連続得点、12-9とリードを奪う。その後も素早い切り返しと強打で仕掛け続けるオランダペアの猛追を振り切り、最後は岩永がサーブ後の素早い反応で球を沈めて、岩永/中西が21-15で3回戦進出を決めた。
『写真:日本バドミントン協会/T.KITAGAWA』
『PHOTO:NBA 2022/T.KITAGAWA』