男子シングルス
トッププロスペクトが圧巻のプレーで西本を撃破。快勝劇で頂きへ突き進む。
クンラブット・ヴィチットサーン(タイ) 21-13/21-6 西本拳太(日本)
この種目日本人唯一の3回戦進出を果たした世界ランキング21位の西本拳太が登場し、2017~2019年の世界ジュニアで3連覇の実績を持ち、若手世代を牽引する世界ランキング17位のクンラブット・ヴィチットサーンと対戦した。
静寂のロングラリーで幕を開けた第1ゲーム、互いにリアコートへのクリア、アタックロブを多用し揺さぶりをかけながら点を取り合っていく。11-9で迎えた後半、クンラブットは巧みなラケットワークでネット前からディセプションショットを織り交ぜ、甘いリターンをスマッシュで沈めていく。西本も執拗に、相手のラウンドを狙ったクリアから、次の球へのタッチを早めてチャンスを伺うものの、クンラブットの対応力が勝る。21-13としたクンラブットがこのゲームを制す。
第2ゲームに入ると、クンラブットはスピードラリーで仕掛け、積極的にアタックにつなげていく。大きな展開に押し戻して立て直したい西本であったが、ロブショットが捕まってしまう。クンラブットは素早い動きから、飛びついてのスマッシュで西本の打開策を封じて圧倒。全く付け入る隙を与えず、21-6で軽快に3回戦勝利を決めた。
なす術なく悔しい敗戦となった西本は試合後「相手の力強いクリアや他のショットの打ち分けがうまくて、それに対してラリーを嫌がってしまった。もっと我慢できたかもしれないけど、修正できなかった。それが今の自分には足りない部分。目をそらさずにもう一度自分に向き合って(今後の練習を重ねて)やっていきたい」と語った。この負けを価値ある負けにするためにも、西本の鍛錬は続いていく。
女子シングルス
至上のサウスポー対決。元女王が復活を印象付ける勝負強さを見せる。
キャロリーナ・マリン(スペイン) 16-21/21-15/22-20 ヘ・ビンジャオ(中国)
この種目最多となる3度の優勝を誇るキャロリーナ・マリンが登場。マリンは左前十字靭帯断裂と半月板損傷により、約1年の大会欠場を経て今シーズンに臨んでいる。ヨーロッパチャンピオンに続き、世界チャンピオンの返り咲きを期待するファンも多く、その回復と進化の様子に注目が集まった。対して中国の2番手選手であるヘ・ビンジャオは、ビッグタイトル奪取を目指して何としても勝ちたい一戦となった。
第1ゲーム、タメのあるフォームで的確な配球を見せたヘ・ビンジャオが先行する。中盤、マリンのネット前での揺さぶりに苦しみ一旦は追い抜かれたものの、クロスのスライスショットとストレートスマッシュを効果的に沈めて21-16で奪う。
第2ゲームもヘ・ビンジャオがラリーでチャンス球を作っては強打で決めていき、9-5とリードを奪う。しかし、ここからマリンは故障明けを感じさせないほどの素早いフットワークを見せ、持ち味である攻撃的ラリーで盛り返していく。インターバル明けに一気に追いついたマリンは、そのまま攻め立てて21-15で取り返した。
前ゲームの勢いそのままに、スマッシュを打ち切るなどマリンが闘志を見せて始まったファイナルゲームだが、序盤はヘ・ビンジャオがネット付近のショット精度を上げて、チャンス球を打ち込んで6連続得点をあげるなど先行する。長めのスマッシュやクロスショットなど、相手の意表をつくショットの組み立てで20-16とマッチポイントを握る。次のラリーでフォア奥から鋭いストレートスマッシュを突き刺すが、これが惜しくもアウト。切り替えて1本を取りに行こうとするが、マリンの向っていく気持ちがこれを上回る。今日一番の速いタッチを見せたマリンがスライスショット、スマッシュを立て続けに決めるなどして延長ゲームに持ち込むと、そのままシャトルを押し込み、最後ヘ・ビンジャオのスマッシュがアウトとなって22-20。土壇場の6連続得点でマリンが接戦を制した。
試合後には「1年間トーナメントから遠ざかったことは、その間トップ選手と戦えないことで積み上げてきた自身が揺らぐ。そういった意味では身体的よりも精神的なダメージが大きかった。そのような中で今日の試合は、自身を取り戻していくためにも大事な試合だった。勝つことが出来てよかった」と述べたキャロリーナ・マリン。幾度のケガを乗り越えて、女王に返り咲く日もそう遠くなさそうだ。
なお、同じく行われた女子シングルス3回戦で日本人対決となった山口茜と髙橋沙也加の一戦は、「しっかり自分のペースで戦えた」という山口が第1ゲーム18本、第2ゲーム7本で髙橋を下し、大会連覇へ向けて順調な勝ち上がりを見せた。
男子ダブルス
百戦錬磨のインドネシアペア、冷静に僅差をものにして勝ち上がる。
モハマド・アッサン/ヘンドラ・セティアワン(インドネシア) 21-18/23-21 マーク・ラムスフス/マーヴィン・シーデル(ドイツ)
この種目のレジェンドでもあるインドネシアのモハマド・アッサン/ヘンドラ・セティアワンが、ドイツの長身エースペアであるマーク・ラムスフス/マーヴィン・シーデルと対戦した。過去に世界選手権男子ダブルスを4度制している(このペアリングでは2度)セティアワンは、今日が38歳の誕生日である。
第1ゲーム、力のあるスマッシュを軸に組み立てて持ち味を発揮したのはラムスフス/シーデルで、11-7とリードを奪う。しかし、豊富すぎる経験値を持つアッサン/セティアワンは多彩なショットや間を自在に操って流れを引き寄せる。アッサンは優れた予測と素早いシャトルへのアプローチで相手を崩し、セティアワンは無駄の一切がそぎ落とされた動きから、瞬発的なパワーをシャトルに伝え、次々にショット決めていく。アッサン/セティアワンが21-18でこのゲームを奪った。
第2ゲームは互いに攻撃の場面では連打で打ち切る展開が増え、それぞれが連続得点を重ねてシーソーゲームで進んでいく。対照的だったのはアタックレシーブへの対応の違いで、アッサン/セティアワンは緩急を使いながら上手くいなす一方、ラムスフス/シーデルは飛びついて強打で押し込み、それぞれのプレーの色を見せた。終盤、17-20と後のないラムスフス/シーデルは、ラムスフスのジャンピングスマッシュを起点にスピードを上げた球回しで一旦追いつくが、上回ることはできなかった。要所での力の加減を知り尽くしたアッサン/セティアワンが冷静にシャトルを押し込み、23-21として無事にセティアワンのバースデー勝利を掴んだ。
また、この種目で同じく3回戦を戦ったディフェンディングチャンピオンの保木卓朗/小林優吾(日本)は、アレクサンダー・ダン/アダム・ホール(スコットランド)を相手に、2ゲームとも中盤から抜け出す強者の試合運びで、見事準々決勝進出を決めている。
女子ダブルス
強い気持ちで強敵と対峙、シダマツペアが勝利と笑顔で観客の期待に応える。
松山奈未/志田千陽(日本) 21-16/21-16 ピアリー・タン/ティナー・ムラリザラン(マレーシア)
東京五輪後の飛躍が目覚ましく、一躍世界のトップダブルスの仲間入りを果たした世界ランキング5位の松山奈未/志田千陽が、ほぼ同年代で世界ランキング11位、マレーシアのエースペアであるピアリー・タン/ティナー・ムラリザラン(マレーシア)との3回戦に臨んだ。
第1ゲーム、「相手ペアは、最近は上位選手にも勝つなど勢いがある。絶対に勝ちたいと思って臨んだ試合だったので、出だしは緊張感がプレーに出てしまった」と志田が振り返ったように、序盤の探り合いではラリーの内容では勝っているものの、思うように主導権を握れない。それでも後半は足が動くようになり、5連続得点をあげてリードを奪うと、流れるようなディフェンスから攻めに転じるラリーで確実に仕留め、流れを渡すことなく、21-16でゲームを奪取する。
第2ゲームも、トップ&バックの形で強力な攻撃を仕掛けてくるピアリー・タン/ティナー・ムラリザランの攻撃に松山/志田は我慢の展開が続く。9-10で追いかける松山/志田は持ち味のスピードを発揮する。ラリーの中で立体的な配球で相手を揺さぶりつつ、松山の素早い詰めでプッシュを沈める場面が増えて8連続得点で抜け出す。最後は志田がスマッシュを決めて21-16とし、見事ストレート勝ちを収めた。
試合後には「明日は韓国ペアとの対戦となり、ディフェンスが強い相手との戦いになるので、最後まで我慢して勝ちたい(松山)」と述べており、ビッグトーナメントの階段を1つずつ登っていく準備はできている様子だ。
また、3度目の世界女王を目指して戦う松本麻佑/永原和可那は、ドゥ・ユエ/リ・ウェンメイ(中国)相手に、長いラリーをしっかりと決め切って21-13、21-9と快勝をおさめている。
『写真:日本バドミントン協会/T.KITAGAWA』
『PHOTO:NBA 2022/T.KITAGAWA』