8月27日の試合レポート(準決勝)

男子シングルス1
盤石の勝利、全てのプレーを高次元に高めたアクセルセンが連勝を伸ばし王者奪還に王手をかける。

ビクター・アクセルセン(デンマーク) 21-15/21-17 チョウ・ティエンチェ(チャイニーズ・タイペイ)

ビクター・アクセルセン(デンマーク)
ビクター・アクセルセン(デンマーク)

 現在トーナメント3大会優勝中にして、コートに立って戦った試合では35連勝中と、異次元の強さを見せつけている世界ランキング1位のビクター・アクセルセンが、同4位の32歳、チョウ・ティエンチェと準決勝を戦った。過去の対戦は15勝2敗とアクセルセンが大きく勝ち越しており、今日も無敵のプレーが炸裂するのではとファンの期待を集めた。

 第1ゲーム、ビルディングショットながらも決定打になりうるほどの威力とコントロールを持ったスマッシュを多く取り入れ、攻撃的なラリーを仕掛けるアクセルセンが早々に8-2とリードを奪って進めていく。「体力面では勝てると思った」というチョウは、丁寧に球を拾っては押し返してロングラリーに持ち込み、好機で仕掛けて15-18まで盛り返すが、追いつくことはでない。アクセルセンが終盤4連続得点でゲームを奪取する。

チョウ・ティエンチェ(チャイニーズ・タイペイ)
チョウ・ティエンチェ(チャイニーズ・タイペイ)

 第2ゲームも対照的な2人によるハイレベルなラリーが多く展開され、互いに点を奪い合う。ゲーム後半にはチョウが早いタッチから球を上げさせ、飛びついて打ち込み決めていく場面も見え、16-14とリードを奪う。しかし、鍛えぬいたフィジカルによりスピードをあげられるのはアクセルセンも同じであった。ロングラリーを取り返して16-16と追いつくと、強力なドライブを繰り出して一気に崩すほか、強力なジャンピングスマッシュを沈めて、21-17で見事なストレート勝利を掴んだ。

 無事にコート上での連勝を36に伸ばしたアクセルセンは、この種目の大本命として、明日の決勝戦で4大会ぶりの王者奪還に挑戦する。

男子シングルス2
ラリー力、スピードで上回り、会場に適応して初の決勝進出!

クンラブット・ヴィチットサーン(タイ) 22-20 / 21-6 ツォア・ジュンペン(中国)

クンラブット・ヴィチットサーン(タイ)
クンラブット・ヴィチットサーン(タイ)

 世界ランキング17位で21歳のクンラブット・ヴィチットサーンと世界ランキング23位のツォア・ジュンペンが対戦した。クンラブット・ヴィチットサーンは、2019年世界ジュニア選手権で史上初めてとなる3連覇を達成した、次世代のスター候補である。これまで、日本の奈良岡功大、西本拳太、前回王者のロー・ケンユー(シンガポール)を下している。一方のツォア・ジュンペンもリー・ジージア(マレーシア)を破っており、勢いがある同士の対戦となった。

 第1ゲーム、高次元のラリーの応酬ではあるものの、ともに落ちついてプレーをするタイプのため強烈なスマッシュやガッツポーズなどなく淡々と試合が進んでいく。クンラブット・ヴィチットサーンはスピードと巧みなラケットワーク、ツォア・ジュンペンは着実なプレーと左腕からの広角に打ち分ける角度ある強打が持ち味である。スピードで勝るクンラブット・ヴィチットサーンがラリーを有利に運ぶが、「ミスが多かった、風でコントロールに苦しんだ。」と振り返ったようにクリア、ロブのバックアウトが多く、思うように得点を奪うことができない。15-17のビハインドで、これまで長いラリーが続いていたが、クンラブット・ヴィチットサーンはスピードを上げてリズムよく3打のラリーで得点を連続で奪い、勢いに乗る。このあたりの勝負勘はさすがと感心させられる。ツォア・ジュンペンは強打で対抗するも、長いラリーの中でさらにスピードを上げたクンラブット・ヴィチットサーンがゲームポイントを握る。最後はツォア・ジュンペンのスマッシュがネットにかかり、22-20。ここまであまり感情を表に出してこなかったクンラブット・ヴィチットサーンがガッツポーズを見せる。

ツォア・ジュンペン(中国)
ツォア・ジュンペン(中国)

 第2ゲームは、クンラブット・ヴィチットサーンの「スピードを上げて攻撃のチャンスを与えなかったし、シャトルもうまくコントロールができた」に対して、ツォア・ジュンペンは「風が思ってたのと違った。この会場に合わせることができずミスしてしまった。経験不足だった」と振り返った。クンラブット・ヴィチットサーンが連続10ポイントを奪うなどワンサイドゲームで、21-6で初の決勝進出を果たした。

 試合後、決勝のビクター・アクセルセン(デンマーク)について、「世界トップのプレーヤーなので学びたい。強いので、難しい戦いになる。試合を見てしっかり対策を立てたい」とタイ史上初のタイトル獲得に向けて話した。

女子シングルス1
大歓声に包まれ掴んだ勝利。楽しむプレーで2連覇を目指す

山口茜(日本) 21-19 / 21-12 アン・セヨン(韓国)

山口茜(日本)
山口茜(日本)

 世界ランキング1位で25歳の山口茜が、同3位で20歳のアン・セヨンと対戦した。両者が試合前に語った、積極的な攻めを意識したプレーが見どころだ。対戦成績は7勝5敗と山口が勝ち越しているが、東京五輪後に大ブレイク、ワールツアー5勝とどちらが勝つかわからない。

 第1ゲーム、予想通りお互いが攻め合い、テンポの速い展開になる。山口はカットスマッシュとスマッシュを軸に攻める。一方のアン・セヨンは低弾道のクリアとロブによって相手を崩し、空いたスペースに配球する。お互いが持ち味を発揮し、見応えのある長いラリーが続く。山口が「点を取られても取り返すイメージで進めた」と話すように、終盤ギアを一段上げ、鋭いスマッシュを左右に打ち込む。特に、ラウンドからのリバースカットスマッシュは絶品だった。最後はドロップが決まり、攻めの姿勢を貫いた山口が21-19で奪取する。

アン・セヨン(韓国)
アン・セヨン(韓国)

 第2ゲームは、一転山口のペースで進む。「自分の方がコートに適応できなかった」というアン・セヨンは、集中が切れたのかミスが増える。対照的に山口のスピードは上がり、ジャンプスマッシュをエースショットに点を重ね、8連続得点、5連続得点で19-6と抜け出す。マッチポイントを取った後、勝利が見えたのか山口のミスが重なるものの、会場の大きな手拍子に後押しされ、21-12で決勝進出を決めた。

 山口は試合後、「あまり決勝ということを考えず、楽しんでプレーしたい」と意気込みを語り、世界ランキング1位として決勝戦も私たちを魅了してくれること間違いなしだ。

女子シングルス2
緊迫のセミファイナル、女王タイトルを狙う2人の意地が衝突し、激戦を究める。

チェン・ユーフェイ(中国) 15-21/21-14/21-18 タイ・ツーイン(チャイニーズ・タイペイ)

チェン・ユーフェイ(中国)
チェン・ユーフェイ(中国)

 1年前の東京オリンピック決勝戦と同じマッチアップが、この世界選手権準決勝で実現した。東京五輪金メダリストのチェン・ユーフェイは、2011年を最後にこの種目の優勝を掴み損ねている中国の期待を受けての一戦が続く。一方、銀メダリストのタイ・ツーインは、今の世界ランキングこそ2位だが、群雄割拠の女子シングルスで、ここ5年間のほとんどの期間で1位の座にいた紛れもない実力者。それでもいまだ掴めていない世界女王の冠だけに、勝ちたい気持ちは強い。そんな2人の至上の戦いに注目が集まった。

 第1ゲーム、タイ・ツーインが高い技術を見せる。コートを広く使った球回しに加え、精度の高いスライスショット、更には巧みなディセプションショットを存分に織り交ぜチェン・ユーフェイを翻弄し。12-3と軽快に先行する。その後。攻撃的なラリーを試みるチェン・ユーフェイの猛追があったものの、21-15で振り切ってゲームの奪取に成功する。

 第2ゲームも、豊富な運動量と正確なストロークを武器にタイ・ツーインが先行していく。このまま押し切っていくかと思われたが、後半には一転する。ヘアピン、スライスショット、スマッシュを2つと、まさかの4ラリー連続のミスをしてしまう。対するチェン・ユーフェイはこの好機を逃さず、強打を中心に畳みかけて7連続得点を奪い、最後はアタックレシーブを押し込んで21-14と取り返した。

タイ・ツーイン(チャイニーズ・タイペイ)
タイ・ツーイン(チャイニーズ・タイペイ)

 ファイナルゲームもチェン・ユーフェイが攻撃的ラリーで襲い掛かる。「前半のコート(エンド)でうまくシャトルコントロールが出来なかった」というタイ・ツーインを尻目に、チェン・ユーフェイはスマッシュを押し込んではフロントコートでプッシュ、ネットショットを決めていき11-4と優位に折り返す。このままでは終われないタイ・ツーインは、驚異の粘りを見せてラリーを再構築するほか、スピンネットを多用して甘い球を誘い出し、気持ちを込めたスマッシュを沈めて追いかける。2人が繰り出す終盤のラリーは、男子シングルスかと見間違うほどのスピードと激しさがあり、点が入るごとに大きな拍手がわき起こる。終盤の肉薄する展開に、マッチポイントを握ったチェン・ユーフェイも疲労の色を隠せず、死力を尽くした対応が続く。しかし、結末は意外な形で訪れた、2点差まで縮まりいよいよわからなくなってきた最終盤、タイ・ツーインが好機で放ったクロススマッシュがサイドラインを割り、勝負が決した。その瞬間、勝ったチェンはコートに大の字に倒れこみ、遅れて喜びをかみしめた。

男子ダブルス1
衰えなきベテラン、ダブルスを知り尽くしたアッサン/セティアワンが真の頂へ王手

モハマド・アッサン/ヘンドラ・セティアワン(インドネシア) 23-21/21-12/21-16 ファジャル・アルフィアン/ムハマド・リアン・アルディアント(インドネシア)

モハマド・アッサン/ヘンドラ・セティアワン(インドネシア)
モハマド・アッサン/ヘンドラ・セティアワン(インドネシア)

 インドネシアペア同士の対戦となったこの準決勝、34歳、38歳の大ベテランペアであるモハマド・アッサン/ヘンドラ・セティアワンが、後輩のファジャル・アルフィアン/ムハマド・リアン・アルディアントと準決勝で対峙した。国際大会では過去2勝2敗とイーブンであり、ベテランの老獪で巧みなゲームメイクvs勢いとスピードの構図に会場の注目が集まった。

 伝統のインドネシアダブルスらしい強力すぎるドライブ合戦と、好球必打のスマッシュ連打が惜しげもなく展開されたこの試合、共に26歳でアスリートとしての全盛期に差し掛かったアルフィアン/アルディアントは、第1ゲーム序盤からスピードに乗ったプレーを展開していき、15-7とリードを奪う。しかし、誰よりも競技を熟知しているアッサン/セティアワンは焦ることなく、然るべきタイミングでの集中力を見せて追いつき、23-21で延長ゲームを制する。

 第2ゲームも出だしからアルフィアン/アルディアントが飛び出してリードを奪っていく。ネット前のほとんど浮いていないようなシャトルさえ確実に仕留める好プレーの連発で勢いに乗ると、アルディアントのスマッシュも唸りを見せて決まっていく。このゲームを21-12で取り返した。

ファジャル・アルフィアン/ムハマド・リアン・アルディアント(インドネシア)
ファジャル・アルフィアン/ムハマド・リアン・アルディアント(インドネシア)

 ファイナルゲームに入ると、百戦錬磨のベテランペアが実力を発揮。それまでと一転してどん欲にリードを狙い、早く仕掛ける展開で優位に進めていく。セティアワンが正確無比なネットプレーで相手を崩し、アッサンが尋常ではない速度でシャトルの下に入り込んで、強力なジャンプスマッシュをコントロールよく打ち込んでいく。コンビネーションも冴えわたり、3度世界王者に輝いた折り紙付きの実力を遺憾なく発揮。最後は息をのむドライブの応酬から、アッサンがラウンドに飛びついてスマッシュを沈め、21-16で勝利を掴んだ。

 「僕たちは真摯な練習を誰よりも沢山している。そして負けたくないという気持ちが続いているから強くいられる」というアッサン/セティアワン。彼らが明日の試合をものにすれば、同一ペアとしての優勝最多タイ記録、セティアワンの個人としてダブルス最多優勝新記録、および種目を超えた世界選手権最多優勝タイ記録を手中にすることとなる。正真正銘のレジェンドペアになる瞬間を、この日本で目撃せよ。

男子ダブルス2
自分のスタイルを貫いたマレーシアペア。77分の激闘を制す

アーロン・チア/ソー・ウィイック(マレーシア) 20-22 / 21-18 / 21-16  サトウィクサイラジ・ランキレッディ/チラーグ・シェッティ(インド)

アーロン・チア/ソー・ウィイック(マレーシア)
サトウィクサイラジ・ランキレッディ/チラーグ・シェッティ(インド)

 東京五輪銅メダリストで世界ランキング5位のアーロン・チア/ソー・ウィイックが、今年のトマス杯でインドの初優勝に貢献し自信に満ち溢れているサトウィクサイラジ・ランキレッディ/チラーグ・シェッティと対戦した。これまで、マレーシアペアが5戦全勝だが、前回王者の保木卓朗/小林優吾をファイナルゲームの接戦で下すなど今大会も好調で、緊迫感のある試合の幕が開ける。

 第1ゲーム、ランキレッディ/シェッティに精度の良いサービスから主導権を握られ、高身長を生かしたスマッシュで6-11とリードされる。しかし、チア/ソーが、強みであるトップ&バックの形を作り追い上げ、16-16とする。お互いに主導権を握ろうと低空戦で一点を争うが、ランキレッディ/シェッティがスマッシュ・ドライブなどの強打でねじふせ、20-22で奪われてしまう。

 第2ゲームは、お互いに低空戦で主導権争いを繰り広げ、一点ずつ取り合う展開となる。しかし、中盤からランキレッディ/シェッティにミスが多発し、チア/ソーペアは16-11、19-14とリードする。ランキレッディ/シェッティは強打で追いつこうとするも、最後はチアがプッシュを決めて、21-18で奪い返す。

 ファイナルゲームも低空戦が続き、点数が拮抗する。しかし、「自信がある姿を相手に見せられなかった」と話すランキレッディ/シェッティは、チェンジエンズ以降守りにまわる場面が徐々に増えてくる。持ち味のトップ&バックの陣形で攻め続けたチア/ソーが3連続得点で引き離し、21-16で決勝進出を決めた。

 チア/ソーは「(決勝の相手のインドネシアペアに)東京五輪(3位決定戦)で勝利できたものの、簡単に勝てる相手ではない。明日は自分達のプレーを出すだけ。」と話し、万全の態勢で決勝に臨む様子が伺えた。

女子ダブルス1
完璧な仕上がりを見せた中国ペアが決勝進出を決める

チェン・チンチェン/ジァ・イーファン(中国) 21-13 / 21-14 永原和可那/松本麻佑(日本)

チェン・チンチェン/ジァ・イーファン(中国)
チェン・チンチェン/ジァ・イーファン(中国)

 2018、2019年世界選手権優勝、3回目の優勝を狙う世界ランキング6位の永原和可那/松本麻佑と世界ランキング1位で連覇を狙うチェン・チンチェン/ジァ・イーファンによる、前回大会と同じ顔合わせの準決勝となった。対戦成績として6勝2敗と5連勝中の中国ペアに対して永原/松本が得意とする攻撃の形を作るかが勝負の鍵となる。

 第1ゲーム、「日本ペアの調子がよく、負けるは覚悟ができていたので、リラックスして臨めた」という中国ペアが鉄壁のレシーブを見せて、得意とする低い展開で9-4と試合を有利に進める。一方の永原/松本は「(相手は)低い展開が得意なので、大きな展開でやろうとした」というように、左右に打ち分け、二人の間でシャトルを送ってチャンスを作っては、強打を沈め11-13と詰め寄る。しかし、今日の対戦にしっかり準備をしてフィジカル・メンタルともに充実しているように見えたチェン・チンチェンが、前衛でプッシュを連続で2本決めて流れを引き寄せる。永原/松本の強打に押し負けず強くリターンし続けた中国ペアが21-13でこのゲームを奪う。

永原和可那/松本麻佑(日本)
永原和可那/松本麻佑(日本)

 第2ゲーム序盤、「大きい展開と低い展開のどちらで行くのか、タイミングに迷いが出てしまった」と永原が振り返ったように永原/松本にミスが出てしまい、4-11と中国ペアに大量リードを奪われてしまう。永原/松本は攻め急がず、ドロップで崩してからのスマッシュ連打で一矢報いるものの、「本当に穴がなくて、攻撃もレシーブも両方堅い、自分たちもこのぐらいできるよう目指したい。」と永原が評した中国ペアが21-14で決勝進出を果たした。

 試合後、チェン・チンチェンは、「今日勝ったことの喜びは一旦リセットして、しっかり準備をして決勝に臨みたい」と話した。一方、悔しい敗退となった永原/松本は「永原のケガからの復帰戦だった前回大会は、アタックができない中でできることをやろうという戦いだった。今回はここにかける思いをもって、優勝を目指してきたので、悔しい気持ちがある。通用したところ、通用しなかったところを明確にして、反省して次に活かしていきたい」と松本が口にした。

女子ダブルス2
全てを出し尽くした92分、互角の死闘を制した韓国ペアが初の決勝進出を決めた。

キム・ソヨン/コン・ヒヨン(韓国) 21-16/19-21/25-23 プティッタ・スパジラクル/サプシリー・タエラッタナチャイ(タイ)

キム・ソヨン/コン・ヒヨン(韓国)
キム・ソヨン/コン・ヒヨン(韓国)

 勝負強さを発揮して準決勝に勝ち上がってきた韓国のキム・ソヨン/コン・ヒヨンは東京五輪の銅メダリストであり、安定した攻守でビッグタイトル奪取を狙う。対する世界ランキング20位のタイのプティッタ・スパジラクル/サプシリー・タエラッタナチャイは、この種目でのタイ勢初メダル獲得となり勢いに乗っている。混合ダブルスのチャンピオンでもあるサプシリー・タエラッタナチャイを擁するペアだけに、好ゲームが予想された。

 第1ゲーム、そんな予想を超えてくるような好ラリー、激しい攻防で互いに点を取り合って進んでいく。強いフィジカルを活かして連打を厭わない韓国ペアが、コン・セヨンの気迫あふれるスマッシュを軸にシャトルを押し込んで終盤抜け出し、21-16で奪う。

 第2ゲームに入ると、タイペアは相手の猛攻に対してクロスリターンを有効に使い相手を崩し、183㎝のプティッタ・スパジラクルが角度あるスマッシュを決めるなど19-12と大きくリードを奪う。劣勢の韓国ペアだが、ここから見せた不屈の闘志と1本への執着が素晴らしく、全くあきらめることなく点を取り返していく。穴のないローテーションによるフロントコートへのプレス、そして徹底的な強打で19点まで追いあげたが、わずかに及ばず。タイペアが辛くも逃げ切ってファイナルゲームに持ち込んだ。

プティッタ・スパジラクル/サプシリー・タエラッタナチャイ(タイ)
プティッタ・スパジラクル/サプシリー・タエラッタナチャイ(タイ)

 迎えたファイナルゲーム、互いに気持ちを前面に出した激しいラリーが数多く展開され、一進一退の攻防が続く。相手のお株を奪うような強いドライブリターンとアタックでタイペアが好ラリーを多く制し、先にマッチポイントを奪う。しかし、ここからキム・ソヨンのスマッシュで浅いロブを引き出し、それをコン・セヨンが沈めること2回、20-20と延長ゲームに持ち込む。白熱する大接戦にどよめく観客、その後も2度マッチポイントを握ったタイペアだったが、大事な場面で制球を誤った。最後はネット前に誘い出したチャンス球をキム・ソヨンが沈めて25-23、韓国ペアは共にその場に倒れ、まさに死力を尽くしての勝利を得た。

 「1点ずつ集中しての攻撃を心掛けることが出来た(キム・ソヨン)。リード広げられても、試合が続いている間は負けたわけでない。最後まであきらめずにやれたことがよかった(コン・セヨン)」と、ピンチの場面でもブレることなく自分たちのプレーに徹した韓国ペア。明日の決勝戦では現在対戦4連敗中と苦手にしている中国の女王ペアに挑戦する。今日発揮した逆境をものともしないたくましいプレーで、世界一の座をつかみ取りたい。

混合ダブルス1
東京五輪決勝の再戦、無心のプレーでリベンジを果たす

ジェン・シーウェイ/ファン・ヤチョン(中国) 21-16 / 12-21 / 21-10 ワン・イーリュ/ファン・ドンピン(中国)

ジェン・シーウェイ/ファン・ヤチョン(中国)
ジェン・シーウェイ/ファン・ヤチョン(中国)

 東京五輪銀メダリストで世界ランキング2位、ワールドツアー6大会優勝と絶好調のジェン・シーウェイ/ファン・ヤチョンと東京五輪金メダリストで世界ランキング4位のワン・イーリュ/ファン・ドンピンの中国同士の対戦となった。常にトップで戦うこの2ペアの対戦は異次元であり、会場が息を飲んで見守った。

 お互いに手の内を知り合う両ペアは、前衛での攻めぎ合い、後衛からの強打、目まぐるしく入れ替わる攻守と迫力のあるラリーが展開される。その中で、ファン・ヤチョンが前衛、レシーブで前に入って攻めの形を作ったジェン・シーウェイ/ファン・ヤチョンが先行する。中盤ミスが重なり、追いかける展開になるが、ジェン・シーウェイが早送りで見ているような動きでドライブ、スマッシュ、プッシュと次々と沈めていき、逆転し、21-16でこのゲームを奪う。

ワン・イーリュ/ファン・ドンピン(中国)
ワン・イーリュ/ファン・ドンピン(中国)

 第2ゲーム序盤、ワン・イーリュがギアを上げて、スマッシュを2本決めるなどして、6-3と抜け出す。ジェン・シーウェイ/ファン・ヤチョンは1ゲーム同様攻めの形を作っていくが、あと1本というところで、ミスが出しまい、追いつくことができない。「このゲームの相手の攻撃がすごかった」とジェン・シーウェイが振り返ったように、プレッシャーをかけ続けたワン・イーリュ/ファン・ドンピンが5連続ポイントで21-12と畳みかけ、奪い返した。

 ファイナルゲームに入ると、「今日のよかった点は、2ゲームを奪われてしまったことに対応できたこと。ファイナルゲーム調整できたこと(ジェン・シーウェイ)」、「体力を消耗していた。相手の方が調子がよく、ミスしてしまった(ファン・ドンピン)」と対照的な2ペア。「優勝したいとか余計なことは考えず、いいプレーをすることに集中している(ジェン・シーウェイ)」と無心のジェン・シーウェイ/ファン・ヤチョンが6-1、9-2、16-3と連続ポイントで圧倒する。結局は、21-10で東京五輪のリベンジを果たし、3回目の優勝に向けて決勝進出を果たした。

 試合後、決勝を戦う渡辺勇大/東野有紗について、「非常に強い。帰ってしっかり休んでから、研究して戦いたい(ファン・ヤチョン)」、それぞれの印象を「渡辺はスピードが速い、東野は小さいがフィジカルが強い選手」と話した。

混合ダブルス2
声援を受け快勝。初の世界選手権制覇に向け、心身ともに準備万端

渡辺勇大/東野有紗(日本) 21-8 / 21-6 マーク・ラムスフス/イザベル・ロハウ(ドイツ)

渡辺勇大/東野有紗(日本)
渡辺勇大/東野有紗(日本)

 東京五輪銅メダリストで世界ランキング3位の渡辺勇大/東野有紗が、準々決勝と準決勝で世界ランキング上位の選手を下して勝ち上がってきた、世界ランキング12位マーク・ラムスフス/イザベル・ロハウと対戦した。

 第1ゲーム、渡辺/東野のゲームメイクが光る展開となった。ラムスフス/ロハウが積極的にドライブを打つのに対し相手のいないスペースに配球し、甘いリターンを強打で沈めていく。4連続、6連続得点で相手を圧倒し、17-7とする。「スピードについていけなかった」というラムスフス/ロハウを21-8と圧倒する。

マーク・ラムスフス/イザベル・ロハウ(ドイツ)
マーク・ラムスフス/イザベル・ロハウ(ドイツ)

 第2ゲームも、序盤から渡辺/東野のペースで試合が進む。「東野さんが攻撃の形を作ってくれたおかげで攻撃をできた(渡辺)」と話す通り、トップ&バックの形を維持することで得点を重ね、8連続得点などで16-2と相手を全く寄せ付けない。終始主導権を握った渡辺/東野が21-6で本日の試合の中で最速の28分で前回大会に引き続き、決勝進出を決めた。

 試合後、「勝つために全力を尽くす。まだ優勝していないので。(渡辺)1試合ごとにコンディションは良くなっている(東野)」と、ホームでの初優勝に向けて、心身共に万全の様子が伺えた。

『写真:日本バドミントン協会/T.KITAGAWA』
『PHOTO:NBA 2022/T.KITAGAWA』