男子シングルス
五輪金のビクター・アクセルセンが
2017年以来のVに王手をかけるか
桃田賢斗(日本)や前回王者のロー・ケンユー(シンガポール)、21年全英王者のリー・ジージア(マレーシア)といった優勝候補が軒並み姿を消す中、危なげない勝ち上がりで、絶好調ぶりを見せつけているのが東京五輪金のビクター・アクセルセン(デンマーク・WR1位)だ。準決勝でも東京五輪銅のアンソニー・シニスカ・ギンティング(インドネシア)を2ゲームとも10本で下し、圧倒的な強さを見せつけた。
準決勝はベテラン周天成(チャイニーズ・タイペイ・WR4位)が相手。粘り強い32歳は、インドネシアのヨナタン・クリスティとの準々決勝ファイナルゲームで15-20から大逆転。大きな拍手を浴び、「すべての力を出せた」と喜んだ。準決勝でも隙が見当たらないアクセルセンに対し、積極的に攻めながら勝機を探るつもりだ。
【明日への抱負】
周天成「(アクセルセンは好調だが)今、この時点では過去のことだともいえる。次の試合は新しい始まり。彼が強いとか過去は見ないようにして、前だけを見て戦うつもりだ」
対戦成績=ビクター・アクセルセンが15勝2敗
フレッシュな顔合わせのタイVS中国!
もう一つの山は、タイの21歳・クンラブット・ヴィチットサーン(WR17位)と中国の26歳・趙淳鵬(WR23位)が対決する。ともにワールドツアーでは目立った存在ではなかっただけに新鮮な顔合わせだ。
ただ、ヴィチットサーンはジュニア時代から将来を嘱望されていた。2019年、世界への登竜門、世界ジュニア選手権で史上初めてとなる3連覇を達成。攻守ともに優れるオールラウンダーは、ここ数年、ブレイクが待たれていたが、今回、日本の奈良岡功大と西本拳太、前回王者のロー・ケンユーに勝ち、世界トップクラスの仲間入りを果たした形だ。
一方、ワールドツアーでベスト8クラスだった趙淳鵬は、8強決めで優勝候補のリー・ジージア(マレーシア)を退けての準決勝進出。左腕から放つ鋭角ショットを武器に決勝進出をつかみにいく。
【明日への抱負】
クンラブット・ヴィチットサーン「趙淳鵬選手のプレーについては、よくわからないので、これから帰って研究します」
趙淳鵬「準決勝に向けて、楽しみな気持ちと緊張する気持ちが半々。この1年間は、自分のいいところと課題をしっかり分析し、努力してきました。明日はしっかり準備して試合に臨みます」
対戦成績=クンラブット・ヴィチットサーンが1戦全勝
女子シングルス
山口茜が決勝進出をかけ
韓国の安洗瑩と対戦
準決勝で過去3回優勝のキャロリーナ・マリン(スペイン)を2ゲームとも17本で退けた日本の山口茜(WR1位)。準決勝では、東京五輪後、ワールドツアーで5勝を挙げ、ビッグタイトルを渇望する韓国のホープ安洗瑩(WR3位)を迎える。
2人のプレースタイルには共通点が多い。いずれもオーバーヘッドからの多彩な攻撃が持ち味で、フットワークも軽やか。違いは、山口がいかにも重い球を放つのに対し、安洗瑩が170センチの長身から切れのいいスマッシュやカットを沈める点だろう。
今大会には、安洗瑩の家族も訪れている。家族を呼び寄せた理由について、安洗瑩は「海外で優勝した姿を見せたことがないので見せたかったんです」と明かす。一方、山口にも日本のファンに2連覇を届けたい強い思いがあるはずだ。
大切に思う人々のために戦う2人の全力プレーをしっかりと見届けてほしい。
【明日への抱負】
山口茜「安洗瑩選手にはディフェンス力とラリー力がある。ラリーを嫌がったりすると、簡単にやられるので、ラリーするだけでなく、自分からも積極的に攻めていきたい」
安洗瑩「明日は山口選手でのホームでの試合になる。私は欲をなくして、山口選手からいろいろ学ぶつもりで対戦したい。積極的に攻めていくつもり」
対戦成績=山口茜が7勝5敗
東京五輪決勝の再戦!
陳雨菲と戴資穎が対決へ
東京五輪の熱気がふたたびやってくる。1年前、大舞台で決勝戦を争った中国の陳雨菲(WR4位)とチャイニーズ・タイペイの戴資穎(WR2位)が準決勝で相まみえることになった。
東京五輪では、陳雨菲が21-18、19-21、21-18の大激戦を制した。どちらに勝利が転がってもおかしくない展開だっただけに、今回も熱い戦いになるだろう。陳雨菲の広いコートカバー力と、戴資穎の巧みなラケットワークにも注目してほしい。
オリンピック、世界選手権とビッグタイトルに縁がない戴資穎にとっては、今回こその思いで挑む大会になる。
【明日への抱負】
陳雨菲「明日は風の方向を早めに見極めたい。その把握なしには、戦術も決まりません」
戴資穎「陳雨菲選手は、攻守に優れたオールマイティーな選手。辛抱強くいかないと勝てません。試合序盤からイニシアチブを握っていきたい」
対戦成績=戴資穎が17勝6敗
男子ダブルス
“柔”VS“剛”のインドネシア対決が盛り上がる!
注目選手が多く入った2コートには他より強い風が吹き、多くの優勝候補が沈んだ。大会3日目に散った第1シードのギデオン/スカムルヨ(インドネシア)もそのうちの一つ。明日は波乱の多いサバイバルゲームを生き抜いた4ペアが激突する。
まず白熱間違いなしなのが、インドネシア対決だ。世界でもっとも経験豊富なヘンドラ・セティアワン/モハマド・アッサン(WR3位)は、東京五輪後、成長著しいファジャル・アルフィアン/ムハマド・リアン・アルディアント(WR5位)を迎える。
2008年北京五輪金のヘンドラは、世界選手権で4回優勝、アッサンは3回優勝を果たしたレジェンド。準決勝には欧州2ペア等を下し、勝ち上がってきた。38歳&34歳となり、さすがにスタミナに課題はあるが、どんな球も柔らかく返球し、チャンスに変える技術は見事だ。
一方、アルフィアン/アルディアントは攻撃が持ち味。東京五輪出場は逃したものの、今年の主要ワールドツアーでは2勝中。日本の岡村洋輝/小野寺雅之、古賀輝/齊藤太一を連破した“ジャパンキラー”でもある。明日は機敏な動きと鋭いショットで先手必勝を誓う。
【明日への抱負】
セティアワン「正直、準決勝まで来られたことにびっくり。私たちは明日の対戦相手よりずっと年はとっているが、全力を尽くすのみ。勝つ準備はできている」
アルディアント「これまでは、一つひとつ目の前の試合に集中するだけだったが、ここまで来たからには、一番上を目指したい。私たちは2019年世界選手権の準決勝で彼らに負けたので、明日はもっと集中するつもり」
対戦成績=互いに2勝2敗
東京五輪銅のマレーシアと
インドのスターペアが激突!
もう一つの山は、東京五輪銅のアーロン・チア/ソー・ウィイック(マレーシア・WR6位)とインドのライジングスター、サトウィクサイラジ・ランキレッディ/チラーグ・シェッティ(WR7位)が顔合わせする。
勢いがあるのは、184センチ&186センチの高さを持つインドペアか。前回王者の保木卓朗/小林優吾(日本)を下した準決勝では、高くシャトルを上げたくなかった日本のドライブを素早くとらえて上回り、初のメダルを引き寄せた。試合後、22歳のランキレッディは、「明日はもっといい試合をしたい。トマス杯でインドが初優勝して以降、僕らは誰にも負けない自信がある」と極上の笑顔を見せている。
対するチア/ソーは、チアが後ろ、ソーが前という得意のトップ&バックをいかに築けるか。過去の世界選手権でマレーシアは金メダルを手にしたことがなく、2人は母国の期待を背負う。期待に応えたいチアは、「東京はオリンピックで銅メダルを獲得した特別な場所。今回はもっといい色のメダルに変えてよい思い出を持ち帰りたい」と気合を高めている。
【明日への抱負】
サトウィクサイラジ・ランキレッディ「昨日は準々決勝に進んだうれしさをずっと味わいたくて、眠れなかったし、眠りたくなかった。明日は攻撃し続けて、100%のプレーをしたい」
アーロン・チア「準々決勝で勝ち、メダルを確定できてうれしい。しかし、自分たちの任務はこれで終わりではないので、明日はミスなく確実にプレーしていきたい」
対戦成績=アーロン・チア/ソー・ウィイックが4戦全勝
女子ダブルス
永原和可那/松本麻佑が3回目Vに突き進む!
対戦相手は優勝最右翼の中国
東京五輪は8強に留まり、ケガにも苦しんだ日本の永原和可那/松本麻佑(WR6位)。だが、「原点に戻る」と位置付けた東京体育館では、中国若手や東京五輪4位の韓国との厳しい戦いを制し、4大会連続でのメダルを確定させた。いよいよ準決勝は、前回王者で3回目Vを狙う中国・陳清晨/賈一凡(WR1位)との大一番を迎える。
強敵・陳清晨/賈一凡はトップ&バックからの波状攻撃が持ち味。いったんハマりだすと、その猛攻を止めるのは困難だ。今大会でも強打をさく裂させ、準々決勝まで約半数のゲームをひと桁台で抑えた。疲れも少なく、永原/松本が弱点を見つけるのは簡単でないだろう。
だが、永原/松本は2018年、2019年のような先手を取るプレーをしっかり取り戻し、決勝行きの切符をつかみ取るつもりだ。「負け続けている相手だが、挑戦者の気持ちを持って戦いたい」と松本は気を引き締めている。
【明日への抱負】
松本麻佑「世界選手権は初出場して優勝した思い出深い大会。明日はいいパフォーマンスを維持したい」
賈一凡「私たちは世界のトップ選手と戦うことが本当に楽しい。日本選手との対戦も楽しみにしています」
対戦成績=永原和可那/松本麻佑が2勝6敗
混合ダブルス
「金しか見てない」渡辺/東野が
アップセッターのドイツと対決
前々回銅メダル、前回銀メダルと一歩ずつ階段を上り、もはや「金メダルしか見ていない」という渡辺勇大/東野有紗(WR3位)が銅メダル以上を確保した。ここまでの勝ち上がりは順調そのもの。スコットランド、タイ、マレーシアペアを相手に1ゲームも落とさず、渡辺は「疲れはあるが、もう1回踏ん張れるメンタルはある」と頼もしい。
一方、ノリに乗るのがドイツのマーク・ラムスフス/イザベル・ロハウ(WR12位)だ。8強決めで前回王者のデチャポン・プアヴァラヌクロー/サプシリー・タエラッタナチャイ(タイ)にストレート勝ちする大金星。破竹の勢いは準々決勝でも止まらず、東京五輪4位の鄧俊文/謝影雪(ホンコン・チャイナ)をファイナルゲーム19本で突き放した。ドイツにとって混合ダブルスのメダルは初。勝利の瞬間、2人は「信じられない」と喜びを爆発させた。
渡辺/東野にとっては、ネット前にひるまず突進するドイツペアの積極性がやっかいになりそうだ。
【明日への抱負】
東野有紗「久しぶりの対戦。ラムスフス選手がシャープなスマッシュを打つので、しっかりレシーブして攻撃の展開に持っていきたい」
マーク・ラムスフス「日本ペアはとにかく展開が速い。東野選手は身体能力が非常に高い印象。渡辺選手のジャンプしながらのドロップにも警戒が必要だ。彼らのホームである日本での対戦を楽しみにしている」
対戦成績=渡辺勇大/東野有紗が3戦全勝
『写真:日本バドミントン協会/T.KITAGAWA』
『PHOTO:NBA 2022/T.KITAGAWA』